ISO14001改正のポイント

【第12回】成功の秘けつは「序文」にあり!
〜ISO14001:2015年版「序文」を読む

環境コンサルタント 安達 宏之 氏
(洛思社 代表取締役/環境経営部門 チーフディレクター)

ISO14001:2015年版が2015年9月15日に発行され、11月下旬にはJISが発行される予定です。ISO改正に関するセミナーが各地で活況を呈するなど、自社の環境マネジメントシステム(EMS)を2015年版に移行させるための準備作業が本格化してきたようです。

こうした動きを踏まえて、今号からは、ISO14001:2015年版の箇条ごとに、その考え方や要求事項について解説していくことにします。

今回はまず規格の「序文」を取り上げます。序文の構成は、次の通りです。

0.1 背景
0.2 環境マネジメントシステムの狙い
0.3 成功のための要因
0.4 Plan-Do-Check-Actモデル
0.5 この規格の内容

ここで注目しておきたい項目は、0.1〜0.3です。その中でも特に重要と思われることを紹介しながら、項目ごとにコメントしていきます。

(1)企業などの組織を取り巻く状況と社会の期待
序文では、法規制の強化、環境汚染の深刻化、資源の非効率的な利用、廃棄物の不適正処理、地球温暖化、生物多様性の喪失などの状況を紹介しています。
そして、社会が、組織に対して持続可能な開発、透明性、説明責任への期待を高めていることを述べています。
ISO14001が発行された1996年から現在の社会を見てみると、地球温暖化問題の顕在化とそれへの社会の関心の著しい高まりがよい例となるように、残念ながら環境問題はさらに深刻化したと言えます。それに呼応するように、法規制が年々強化されていることも論を待たないところです。

そうした中で、環境へ大きなインパクトを与える企業に対して、その課題解決に向けた役割をさらに求める社会の動きが強まっていることを、規格は求めていると言えるでしょう。

(2)規格の目的とは?
また、序文では、ISO14001が、社会経済的ニーズとバランスをとりながら、環境を保護し、変化する環境状態に対応するための枠組みを組織に提供することを目的としていると記しています。

「社会経済的ニーズ」とバランスをとりながら環境を保護するということは、序文の別の箇所で触れられているように、将来の世代と現在の世代のニーズを同時に満たすために「環境」と「社会」と「経済」の3つのバランスをとることが不可欠であるという「トリプルボトムライン」の考え方を踏まえたものです。

規格では、この3つのうち、「環境」に関する活動をEMSで実施することを組織に求めているわけです。このことは、組織に対してEMS活動を行う際には、「社会」や「経済」の活動とバランスを持って行われているかどうか確認するとともに、この3つの活動が融合して持続可能な社会づくりに貢献しているかどうかという問題意識を持って活動をすることを求めているとも言えるでしょう。

(3)EMS成功の要因とは?
さらに序文では、EMSの成功は、トップマネジメントが主導する、組織の全ての階層及び機能からのコミットメントのいかんにかかっていることを強調しています。
このコーナーでも何度も触れているように、EMSが成功するか否かは、トップマネジメント次第であることを、規格も確認しているということです。

序文には、組織に対応を要求する具体的な要求事項は書かれていません。そのことから普段、序文を読む方はあまりいないことでしょう。しかし、今回の規格改正の背景や意図が書かれているので、最初にそれらを確認しておくことは、改正規格への理解が進み、移行作業を行うに当たっての指針にもなるのです。




(2015年11月)