ISO14001改正のポイント

【第14回】「経営上の環境課題」を探せ〜
ISO14001:2015年版「4.1組織及びその状況の理解」を読む

環境コンサルタント 安達 宏之 氏
(洛思社 代表取締役/環境経営部門 チーフディレクター)

ISO14001:2015年版の箇条4.1では、組織に対して、「外部及び内部の課題」を決定することを要求しています。

これは、組織の目的に関連し、かつ、その環境マネジメントシステムの意図した成果を達成する組織の能力に影響を与えるものとされています。
企業を取り巻く「課題」には様々なものがあるでしょう。企業全体の課題もあれば、部門ごとの課題もあるかと思います。

この箇条4.1で述べていることは、「組織の目的」や(前回の記事で解説した)「意図した成果」に関連したものだということなので、部門の課題などという狭い意味での「課題」ではなく、組織全体の課題、すなわちハイレベルなものと捉えるべきです。

また、箇条4.1では、これら課題には、組織から影響を受ける又は組織に影響を与える可能性がある環境状態を含めなければならないとされています。

つまり、外部及び内部の課題を検討する際には、「自社にとって、経営上の環境課題には何があるか」と考えてみるとわかりやすいでしょう。
多くの企業における経営上の環境課題としては、例えば、「地球温暖化」や「エネルギー・原材料の不足や価格高騰」、「○○の人材不足、技術継承」などを挙げることができると思います。

さらに、外部及び内部の課題には、「組織から影響を受ける環境状態」だけでなく、「組織に影響を与える可能性がある環境状態」も含めるように求められていることに気を付けなければなりません。

環境と組織の関係において、ISO14001:2004年版では、組織が環境に影響を与えることはもちろん想定されていましたが、ここで言うような、環境が組織に影響を与えることは想定外だったかと思います。

さきほど、外部の課題の例として地球温暖化を取り上げましたが、企業の活動が温暖化問題を招いています。これは、まさに組織が環境に影響を与えているものとなります。
一方、近年、温暖化への「適応」が国際的にも国内的にも重要なテーマとなってきているように、企業の事業活動に温暖化問題が影響を与えつつあります。こうした環境が組織に影響を与えていることもEMSの仕組みの中に組み込むことを求めたと言えるのです。

さて、こうした外部及び内部の課題をどのように決定していくかということで、現在、多くの企業で試行錯誤が重ねられ、筆者もいくつかの企業の検討プロセスに関わっています。

その経験で申し上げると、中長期計画やCSRレポートなどを作成しているような企業には、それらの中に外部及び内部の課題が含まれていると思います。
そのものズバリの表現で「経営上の環境課題」が記載されていないとしても、それを踏まえていない中長期計画やCSRレポートなどはあり得ないはずです。行間を読み込みながら探る必要があります。

一方、こうした明文化された経営上の環境課題が存在しない企業の場合は、経営層へのヒアリングを通して明文化させていく方法が早道だと思います。具体的には定期または臨時のマネジメントレビューの機会に、ヒアリングを行うのです。

なお、規格は、箇条4.1で決定したものの文書化を要求はしていません。
しかし、組織として「決定」することを要求しているので、文書化することが自然であり、実務上もスムーズな運用ができると思います。

決定された外部及び内部の課題は、さらに箇条6.1.1において、それに関連した「リスク及び機会」を決定し、EMS活動として展開されていくことになります。
「経営上の環境課題」、すなわち本業に直結したEMS活動を行う新たなルートが開拓されたことになるのです。有効に活用されることが自社の利益になるはずです。




(2016年01月)