ISO14001改正のポイント

【第19回】「環境管理責任者」はホンモノか?
〜ISO14001:2015年版「5.3 組織の役割,責任及び権限」を読む

環境コンサルタント 安達 宏之 氏
(洛思社 代表取締役/環境経営部門 チーフディレクター)

ISO14001:2015年版の箇条5.3「組織の役割,責任及び権限」は、社長や工場長などのトップマネジメントに対して、責任・権限を割り当てることを要求しています。

規格の具体的な要求は、次の2つです。

ヾ慙△垢詭魍笋法◆崟嫻さ擇啗限」が割り当てられ,組織内に伝達されることを確実にする
⊆,了項に「責任及び権限」を割り当てる
・環境マネジメントシステム(EMS)を規格の要求事項に適合させる
・EMSのパフォーマンスをトップマネジメントに報告する

この箇条に対応する2004年版の箇条は、「4.4.1 資源、役割、責任及び権限」です。 旧規格では、役割、責任及び権限を定めるとともに、特定の管理責任者を任命することも要求していました。
ほぼすべてのISO14001認証企業において、環境管理責任者が選任されていますが、その理由はこの要求事項があるからでした。

しかし、改正ISOにおける5.3では、管理責任者の任命そのものは要求事項ではありません。
EMSを規格の要求事項に適合させ、EMS活動を適切にトップマネジメントへ報告できるように、トップマネジメントが責任と権限を割り振れば、「環境管理責任者」という役職を設けなければならないということにはなりません。

もちろん、「当社は、現在の環境管理責任者の体制で問題なくEMSを運用している」という判断があれば、無理に「環境管理責任者」の文言を外す必要などなく、今まで通りの活動を行えばいいでしょう。

一方、無理に「環境管理責任者」を選任している場合は、今回の規格改正をチャンスとして捉えて自社の仕組みを変えてみるといいでしょう。

複数の工場と本社から成る、ある金属加工のメーカーでは、環境マニュアル上は、本社の総務局長が環境管理責任者であり、EMS活動を行っていました。

ところが、環境に関連した活動を細かく見てみると、どうも実情と合いません。いろいろと話を聞いてみると、環境マニュアルの体制とは別に、実は、複数の委員会(いずれも社長が委員長)の中にテーマに応じた複数の環境関連の部会があり、各部会の部会長(別の局長・複数)をトップに、工場長を含む各部門長が環境上の指揮命令系統に服していたのです。

つまり、マニュアル上の環境管理責任者(総務局長)は、環境管理の責任を持たない“ニセモノ”であったのです。

理由を聞いたところ、元々、同委員会の活動はあったが、ISO認証取得するときに規格適合性を確保しやすいように別組織を書面上立ち上げたということです。書類も審査の度に二重に作るという煩雑な作業をずっと続けていたということでした。

委員会活動を拝見したところ、新規格上も適合性に問題はありません。それであれば、形式的な現行のマニュアルを捨てて、実際の活動をそのまま(必要に応じて)文書化すればいいだけのことです。
もちろん、各部会長をわざわざ「環境管理責任者」と呼ぶ必要もありません(実は旧規格においても「環境管理責任者」と呼ばなければならない要求事項はありませんでしたが)

このように、2015年版への移行作業は、実態に即した体制づくりの好機と捉えて、取り組むとよいでしょう。

(2016年06月)