ISO14001改正のポイント

【第20回】「リスク」と「チャンス」を掘り起こせ
〜ISO14001:2015年版「6.1.1(リスク及び機会への取組み)一般」を読む

環境コンサルタント 安達 宏之 氏
(洛思社 代表取締役/環境経営部門 チーフディレクター)

おそらく、企業のISO担当者にとって最も悩ましいISO14001:2015年版の細分箇条は、「6.1.1」となっているかと思います。

まず、この細分箇条が定めている主な要求事項をまとめると、次のとおりとなります。

〜反イ蓮▲螢好及び機会を決定すること。
∩反イ蓮∪在的な緊急事態を決定すること。
A反イ蓮ぜ,亡悗垢詈現餡修靴疹霾鵑魄飮すること。
 ・取り組む必要があるリスク及び機会  ・6.1.1〜6.1.4で必要なプロセスが計画どおりに実施されるという確信をもつために必要な程度の、それらのプロセス

上記 銑のうち、△砲弔い討蓮◆8.2緊急事態への準備及び対応」にてまとめて解説することとして、今回は最も重要な「リスク及び機会」の項目に焦点を当てて解説します。

ここで具体的に要求されていることは、「リスク及び機会」を決定し、それを文書化することです。ここで決定された「リスク及び機会」は、細分箇条6.2.1の「環境目標」において、環境目標を確立させるときに「考慮」されることになるなど、従来、環境側面と順守義務から導き出されるEMS活動の幅を広げる役割を果たすことになります。
ただし、この「リスク及び機会」について、規格は意外なほど厳密な定義を行っていません。
「リスク」を「不確かさの影響」、「リスク及び機会」を「潜在的で有害な影響(脅威)及び潜在的で有益な影響(機会)」と定義づけているのみです。

したがって、個々の企業の解釈にはかなりの自由度が認められていると捉えてよいでしょう。
例えば、「リスク及び機会」を「リスクとチャンス」と解釈し、自社の「リスク」や「チャンス」を検討・決定するのをこの細分箇条に関する自社の取組みと位置付けても、全く問題ないと私は考えます。

「リスク及び機会」の決定方法も規格は何も示していないので、各社に判断が委ねられています。例えば、経営層の会議で決めていってもいいでしょうし、各部門で議論の上に決めていく方法もあるでしょう。

また、規格は、次の3つに関連した「リスク及び機会」を決定することを要求しています。それぞれの( )内に、企業の設定例を示しておきます。
ヾ超側面
(例:処理委託した廃棄物の不適正処理など)
⊇膽薺遡
(例:順守評価等の担当者変更に伴う力量維持など)
4.1及び4.2で特定したその他の課題及び要求事項
 (例:顧客ニーズを踏まえた省エネ型機器の開発など)

こうした「リスク及び機会」について、2015年版へ移行しようとする企業において、様々な取り組みが見られます。この中でも、特にをどのように決定するかについて、各社の特色が見られるようです。

既にCSRレポートのような媒体を毎年制作している企業では、レポートに掲げてある、組織を取り巻く状況やステークホルダーの声を踏まえ、それらに関連した「リスク及び機会」を取り上げるやり方が多いように思います。 これは、活動の整合性が図れるという理由はもちろん、実務上効率的であるという理由があるからです。
一方、CSRレポート等が無い企業の場合、経営戦略などの資料の中に「リスク及び機会」と推定できるものが含まれていることが少なくありません。

ある中小企業でこうした資料を掘り起し調査していたところ、部門長クラスで検討されていた経営分析資料が出てきました。それは、SWOT分析資料であり、自社の強み、弱み、自社を取り巻く外部環境、内部環境などを提示し、その対策案をまとめたものでした。
数年前に作られ、現在でも有用と思われながらも、事業活動にどのように生かしたらよいか結論が出ず、そのままとなっていたものでした。

そこで、この企業では、今回の2015年版移行をチャンスと捉え、この資料を「リスク及び機会」の文書と位置付け直しました。
その中でEMS活動で行っていない重要活動を掘り出し、新たな活動を行うことに決めたのです。

このように、CSRレポートでなくても、企業の課題分析は、何らかの形で行っている企業が多いはずです。それをうまく掘り出して新たな活動につなげられるようにすると、「やらされ感」も少なく、意義深い取組みとなるかもしれません。

(2016年07月)