ISO14001改正のポイント

【第21回】ライフサイクルを考慮して環境側面を決定する
〜ISO14001:2015年版「6.1.2(環境側面)」を読む

環境コンサルタント 安達 宏之
(洛思社 代表取締役/ 環境経営部門チーフディレクター)

ISO14001:2015年版の細分箇条「6.1.2」は、環境側面に関するものです。

「環境側面」とは、「環境と相互に作用する、又は相互に作用する可能性のある、組織の活動又は製品又はサービスの要素」と定義されており、2004年版から存在している概念です。

例えば、「営業車の使用」という事業活動があれば、「燃料の使用」や「排ガスの発生」などが環境側面となり、「CO2の排出」や「大気汚染」などが環境影響と考えられます。

環境側面は厳密に考えるとかなり難しい概念ですが、日頃の環境マネジメントシステム(EMS)の活動を行う上では、「自社にとって環境に関わるもの」という程度の認識を持っておけば十分だと私は考えています。

2015年版では、環境側面に関する要求事項に大きな変化はありません。
すなわち、環境側面を決定した上で、その中から著しい環境側面を決定します。そのための文書化も求めます。さらに、決定された著しい環境側面を考慮に入れて環境目標を確立するなど、EMSの活動全体に著しい環境側面を反映させなければなりません。

一方、2015年版によって追加された要求事項としては、環境側面や環境影響を決定する際に、「ライフサイクルの視点を考慮」することが挙げられます。

「ライフサイクル」とは、「原材料の取得又は天然資源の産出から、最終処分までを含む、連続的でかつ相互に関連する製品(又はサービス)システムの段階群」と定義されています。

製造業であれば一般に、製品を製造するに当たって、原材料の入手から、工場における製品の製造、製品の販売、販売後の製品の廃棄処分までのライフサイクルが想定されます。
規格はこうした長い段階も考慮して環境側面等の決定を要求しているわけです。

ただし、対象となる環境側面には、2004年版の段階から、「直接管理できる環境側面」だけでなく、「組織が影響を及ぼすことができる環境側面」もあります。

「組織が影響を及ぼすことができる環境側面」として、すでにライフサイクルの視点を考慮して、原材料の入手や最終処分等に関する環境側面を決定し、これらの段階での環境負荷の低減に取り組んでいる企業も少なくないことでしょう。
その場合であれば、すでにライフサイクルの視点を考慮していると判断できる余地は大きいと思います。

この他にも、2004年版には無かった記述がいくつかあります。

例えば、環境側面を決定するときに考慮に入れなければならない事項として、「非通常の状況及び合理的に予見できる緊急事態」が掲げられました。
2004年版では、「4.4.7 緊急事態への準備及び対応」にまとまっていた緊急事態に関する要求事項が、2015年版では、「8.2緊急事態への準備及び対応」だけでなく、が、この6.1.2や前号で紹介した6.1.1に分散したことになります。

とはいえ、環境側面や環境影響の決定の段階で、緊急事態を決定してきた企業が多いことでしょう。それであれば、追加で行うべき活動が増えることにはなりません(ただし、6.1.1における緊急事態の概念は従来よりも広いものとなります。これについては8.2の回で解説します)。

環境側面に関する要求事項の文言も、2015年版になって変わったり追加されたりした箇所は少なくありませんが、このように、既存のEMS活動の中ですでに行われている事項が多いようです。
文字に振り回されることなく、冷静に規格の要求事項を読み、既存の活動との照合に取り組んでみてください。

(2016年08月)