ISO14001改正のポイント

【第22回】環境法のリスクヘッジにチャンス!
~ISO14001:2015年版「6.1.3(順守義務)」を読む

環境コンサルタント 安達 宏之
(洛思社 代表取締役/ 環境経営部門チーフディレクター)

ISO14001:2015年版の箇条6.1.3「順守義務」は、環境法の対応方法を定める規定となります。

「順守義務」とは、今回の2015年版で初めて登場した用語ですが、その定義は、「法的要求事項、及び組織が順守しなければならない又は順守することを選んだその他の要求事項」(3「用語及び定義」)なので、2004年版で使用していた「法的及びその他の要求事項」と全く同じものです。

6.1.3では、まず組織の環境側面に関する順守義務を決定し、参照することを求めています。
この箇所は従来の要求事項と実質的に異なることはありません。自社に適用される環境法規制等があるかを調査した上で、それを特定し、社内で参照できるようにすることを求めているのです。

その上で、これらの順守義務を組織にどのように適用するかについても決定しなければならないことを求めています。
この点は少し変わりました。従来は順守義務が「組織の環境側面」にどのように適用するかについて決定することであったのが、今回はシンプルに「組織」と変わったわけです。

実質的に対応方法が変わるかどうかについては、従来のEMSがこの点についてどのようなものであったか次第ですが、私は、この点についての検討を前向きにすべきだと思っています。

ある大きな事業所の法規制登録簿に、化管法や安衛法の規制事項が書かれている行がありました。その中には、「適用される環境側面」という欄があり、そこに「有機溶剤の使用」という記述がありました。

しかし、この事業所のどこで有機溶剤が使用されているのかどうかはっきりせず、事業所の社員も即答できませんでした。これでは、この規制事項がどこの部門・工程で適用され、誰が責任もって順守するのかがわからないリスクがあります。

このような状況がもし自社にあれば、私はこの要求事項の変更を前向きに捉えて、改めて環境法規制等が自社のどの箇所に具体的に適用され、具体的にどのように対応できるのかを考えるきっかけにしてほしいと思うのです。

また、この箇条では、環境マネジメントシステムを確立し,実施し,維持し,継続的に改善するときに,これらの順守義務を考慮に入れることを求めるとともに、順守義務に関する文書化した情報を維持することも求めています。 これは、ISO14001が、引き続き環境法規制等の順守を積極的に確保する仕組みであり続けることを宣言していることに他なりません。

さらに、この箇条の最後には「注記」があり、順守義務は,組織に対するリスク及び機会をもたらし得ると記述されています。

ここで言う「機会」とは「チャンス」と捉えてよいでしょう。 例えば、建築物省エネ法が2017年4月に本格施行されますが、これによって、省エネ建材の需要が高まり、ビジネスチャンスにつながるでしょう。これはまさに順守義務がチャンスにつながる良い例です。

さらに、「リスク」とは何でしょうか。
個別具体的には、例えば環境法の担当者の異動などが挙げられることでしょう。

環境法への対応を甘く見れば大きな経営リスクにつながります。
企業によっては、EMSが環境法順守の仕組みでもあることが忘れられ、軽く見られていることがあります。しかし、環境コンプライアンスの確保の手段が他になければ、経営リスクにつながることを肝に銘じるべきでしょう。

この要求事項をうまく活用することにより、リスクヘッジのよい機会となるのです。

(2016年09月)