ISO14001改正のポイント

【第34回】監査結果を誰に伝え、有効性を確保するか?
〜ISO14001:2015年版「9.2内部監査」を読む

環境コンサルタント 安達 宏之
(洛思社 代表取締役/ 環境経営部門チーフディレクター)


ISO14001:2015年版の細分箇条9.2では、「内部監査」について定めています。
まず、9.2.1では、環境マネジメントシステム(EMS)が次の状況にあるか否かに関する情報を提供するために、あらかじめ定めた間隔で内部監査を実施することを求めています。

EMSに関して自ら定めた事項やこの規格の要求事項に適合していること
EMSが有効に実施され、維持されていること

旧規格では、上記△里茲Δ法嵳効」ではなく、「適切」という用語が使われていました。よりパフォーマンスを意識した規格になっている一つの証左です。

また、上記の要求事項を改めて読んでみると、EMSが有効であることなどの情報を誰に伝えようとしているのか明示していないことに気づきます。

しかし、規格全体を読んでみれば、情報提供の宛名は明らかです。言うまでもなく、トップマネジメントです。
なぜなら、本細分箇条に続く、9.3(マネジメントレビュー)では、内部監査を含めた監査結果の傾向をレビューの際に考慮することを求めているからです。

では、皆さんの会社では、トップマネジメントが内部監査結果に対してどこまで真剣に受け止めているでしょうか。
真剣に受け止めてもらうために、EMSの責任者や担当者は、どこまで働きかけているでしょうか。

社員が数千人いる大きな企業にて、内部監査研修をしたときのことです。

驚いたのは、研修終了後、社長が登場し、監査員一人ひとりに修了書を渡すとともに、「内部監査を通常の業務の一つとしてしっかり取り組むように」と訓示していました。
さらに、その後の懇親会には副社長が出席し、同様の発言をしていました。

こうした状況を踏まえれば、監査員となった社員は、真剣に内部監査に取り組み、建設的な指摘をすることになるのは、容易に想像できますし、現にこの企業では有効に機能しているようでした。
時折、淡々と監査が行われ、不適合も、改善提案も、何も出てこない内部監査に接することがあります。トップに積極的に関わってもらい、 その意向を「見える化」させることの重要性が、この事例からよくわかるのではないでしょうか。

監査結果の報告先は誰なのか。改めて考えて、対応方法を検討してほしいと思います。

さて、本細分箇条では、続けて9.2.2において、内部監査プログラムの運用について定めています。

そこでは、監査基準を明確にすることなど、プログラムの運用に当たって決めておくべきことを示すとともに、プログラムを確立するときに考慮に入れるべき事項として、 「関連するプロセスの環境上の重要性、組織に影響を及ぼす変更及び前回までの監査の結果を考慮に入れなければならない」ことを強調しています。

昨年と同じ計画に沿って淡々と内部監査を行うのではなく、ぜひ、このことを意識して内部監査を計画してほしいと思います。

例えば、前回の内部監査以降で「変化」のあった箇所はないかどうか。

取り扱う化学物質を増やしたにもかかわらず、それに関連した環境側面の変更を何もせず、かつ、SDS周知などの法規制の対応が行われていない企業がありました。
しかし、直前に行われた、内部監査では、「不適合ゼロ・改善事項ゼロ」という監査結果でした。

新たな事業・プロジェクト、変更された製造工程や業務部門のプロセスなど、従来と異なる動きがあれば、それに関連したEMS活動にはどのようなものがありうるかを計画時に検討し、 それを計画に組み込んでみてはどうでしょうか。

規格の記述を改めて読み直し、改善のネタ探しをぜひ行ってみてほしいと思います。

(2017年09月)