ISO14001改正のポイント

【第4回】経営層の関与を強化! 
〜EMS成功の鍵はリーダーシップ

環境コンサルタント 安達 宏之 氏
((有)洛思社 チーフディレクター)

ISO14001は、元々トップダウンで運用する環境マネジメントシステム(EMS)です。現在の規格の序文でも定めているように、このシステムの成功は、特に経営層(トップマネジメント)のコミットメントのいかんにかかっています。

ISO14001が定めるPDCAサイクルでは、経営層が定める環境方針の下に活動を進め、その結果と改善のための提案等を経営層に報告し、経営層はそれを踏まえて見直しの指示を行い、レベルアップされた活動に移っていくことになります。

改正ISO14001の国際規格原案(DIS)では、こうしたトップダウンの仕組みをさらに強化しています。これまでには無かった「5.1 リーダーシップ及びコミットメント」という箇条が設けられました。

5.1は、経営層に対してEMSに関するリーダーシップとコミットメントを実証することを要求しています。その実証の方法として次の9つを行うことを求めています。

(1)EMSの有効性に「説明責任」を負うこと
(2)「環境方針・環境目的」と「組織の戦略的な方向性・組織の状況」を両立させること
(3)事業プロセスへのEMSの要求事項の統合を確実にすること
(4)EMSに必要な資源が利用可能であることを確実にすること
(5)有効なEMSと要求事項への適合の重要性を伝達すること
(6)EMSがその意図した成果を達成することを確実にすること
(7)EMSの有効性に寄与するよう人々を指揮・支援すること
(8)継続的改善を促進すること
(9)管理層の役割を支援すること
これら9つの事項のうち、特に注目すべきなのは(1)〜(3)です。

まず(1)は、経営層へEMSの有効性に関する「説明責任(accountability)」を負うことを明示しています。経営層は、自らの役割と責任を認識し、EMSの有効性について各方面に自ら説明する責任があることを明らかにしたと言えるのです。

EMS活動が停滞している企業が少なからずありますが、筆者の経験では、その原因の多くは経営層がEMS活動に消極的な姿勢を示していることにあります。逆に言うと、EMS活動が成功している企業の多くでは、経営層が積極的にEMS活動の重要性を社員に伝えています。

企業はそもそもトップダウンの組織ですから、EMSの成否が経営層の姿勢にかかっていることは当然と言えば当然なのです。経営層の説明責任を求めるこの一文は、この当たり前のことが認識されずにいる一部の状況を踏まえた、追加の要求事項のように思えます。
今後、EMSを運用する責任者や部門は、いかに経営層の関わりに実効性を持たせ、経営層自らの言葉でEMSについて積極的に語ってもらうように働きかけていくかに力を注ぐことになるでしょう。このことは、外部審査でも大きく求められてくることでしょう。

(2)と(3)も、重要な事項です。あえて一言でまとめれば、“EMSを本業とリンクさせること”を求めていると言えるでしょう。

EMS活動が、企業の事業目的や事業活動と大きくかけ離れている企業と出会うケースがあります。例えば、環境配慮商品を多く扱う商社において、商品に関する活動(本業)についてEMSでは全く触れずに、営業所の「紙・ゴミ・電気」の活動のみを行い続けるように、本業と距離を置いたEMS活動が見受けられます。 (2)や(3)ではこうした活動の転換を求めていると言えるでしょう。

改正ISOでは、前回述べたように、企業が抱える外部や内部の課題を掘り起こしてEMS活動に反映させることを求めています。また、環境方針が経営方針などと整合性がとれていることも求めています。
“これからのEMSは、本業で環境貢献を行うためにある”。このことを改正ISOは明示しているのだと、私は感じています。


(2015年3月)