ISO14001改正のポイント

【第7回】「環境保護」とはなにか
〜EMSの対象が「拡大」へ

環境コンサルタント 安達 宏之 氏
(洛思社 代表取締役/環境経営部門 チーフディレクター)

ISO14001では、最高経営層(トップマネジメント)に対して環境方針を定めることを求めるとともに、その中に含めるべき事項も定めています。

改正ISOの国際規格原案(DIS)は、環境方針に含めるべき事項のいくつかを変更・追加しています。
その中で最も注目すべきは、環境保護に対するコミットメン卜の対象が明示的に拡大されたことでしょう。

現在のISO14001を読むと、環境方針には、「汚染の予防に関するコミットメントを含む」ことが要求されていることがわかります。
この「汚染の予防」をどのように捉えるかについて、企業の中や外部審査の場でこれまで様々な議論が行われてきたかと思います。

「汚染の予防」とは、素直に考えれば、有害物質等が外部へ漏れ出して環境汚染となる事態を予防することを意味します。 しかし、多くの企業ではこのような狭義の意味に捉えずに、より広義な意味を付与し、環境方針には環境保全全般に関するコミットメントを提示しているのではないでしょうか。

改正ISO14001は、この点を明確にしました。すなわち、「汚染の予防」に限らず、環境方針には、「汚染の予防、及び組織の状況に固有なその他の事項を含む、環境保護に対するコミットメン卜を含む」ことを要求したのです。
したがって、仮に狭義の「汚染の予防」のみを環境方針に入れている企業については、見直しが求められることになります。

では、「組織の状況に固有なその他の事項」とは何を指すのでしょうか。

改正ISO14001では規格本文にその旨を記述していませんが、注記を付し、組織が取り組むべき課題として、次の4つを掲げています。

(1)汚染の予防 ※従来通り
(2)持続可能な資源の利用
(3)気候変動の緩和及び気候変動への適応
(4)生物多様性及び生態系の保護

実はこうした4つの環境課題とは、「社会責任に関する手引」をまとめたISO26000(2010年に発行)に掲げられている考え方です。

かつて企業は、主に公害防止のみに取り組んできました。その取り組みそのものへの重要性は今日も変わりはありません。
改正ISO14001でも、ISO26000でも、「汚染の予防」への認識は当然残しています。

ただし、環境問題の多様化や意識向上に伴って、現代の企業には、資源の有効利用、地球温暖化防止、生物多様性の保全などの様々な環境対策に取り組むことも求められています。
改正ISO14001では、この点を考慮したEMS活動を推進するよう改めて文言が変更したと捉えるべきでしょう。

もちろん、企業によってはこれら事項が事業に関連しない場合もあるでしょう。
改正ISO14001は、「組織の状況に固有なその他の事項」と、「固有な」と限定しているので、全く関連しない事項であれば、無理に環境方針に追加する必要はないと判断できます。

とはいえ、各企業では、今一度、(2)〜(4)を環境方針に含めるべきかどうかを少なくても検討する機会は設けるべきでしょう。
その上で、自社のEMSが現代的な水準に本当に達しているかどうかを見極めることが求められます。


(2015年6月)