ここに注目!環境法

【第30回】トリクロロエチレンの排水基準が強化
〜止まらない水質汚濁防止法の規制強化

環境コンサルタント 安達 宏之 氏
(洛思社 代表取締役/環境経営部門 チーフディレクター)

10月21日からトリクロロエチレンの排水規制が強化されました。

今回の改正は、9月18日公布の「水質汚濁防止法施行規則等の一部を改正する省令」によるものです。

これは、平成26年11月にトリクロロエチレンの環境基準が改正され、公共用水域の水質汚濁に係る健康保護に関する環境基準等が0.03mg/L以下から0.01mg/L以下に強化されたことを受けた改正となります。

ちなみに環境基準とは、「人の健康の保護及び生活環境の保全の上で維持されることが望ましい基準」のことです。いわば地域環境における行政目標の数値であり、企業を直接規制するものではありません。
行政としては、この環境基準が強化されれば、それを実現するために規制基準(今回であれば排水基準)を強化することになります。

さて、今回の具体的な改正内容とは、水質汚濁防止法で届出が義務付けられている特定施設をもつ事業場(特定事業場)が適用を受ける排水基準などが改正されたというものです。

有害物質であるトリクロロエチレンについて、排水基準を従来の0.3mg/Lから0.1mg/Lに、地下水の水質の浄化措置命令に関する浄化基準を0.03mg/Lから0.01mg/Lにそれぞれ改められました。

これら強化された規制基準は、施行日以降に新たに特定事業場となる場合は、直ちに適用されることになります。
ただし、施行日時点において既にある特定事業場の場合は、平成28年4月19日まで適用が猶予されます。また、水質汚濁防止法施行令別表3に掲げる施設を設置する特定事業場の場合であれば、平成28年10月19日まで適用が猶予されます。

それまでの間に、基準内の排水基準に収まるように設備の改善に取り組まなければなりません。

トリクロロエチレンは、一時ほどではないとはいえ、現在においても、代替フロンガスの合成原料、機械部品や電子部品の脱脂洗浄剤として広く使用されています。

羊毛や皮革から油分を取り除く洗浄剤、油脂や樹脂、ゴムを溶解する工業用溶剤、線量や塗料を製造する際の溶剤などに使われています。

トリクロロエチレンを使用する業種を見てみると、化学工業、金属製品製造業、輸送用機械器具製造業、電気機械器具製造業、ゴム・プラスチック製品製造業が挙げられます。
業種別のトリクロロエチレンの公共用水域への排出割合を見てみると、化学工業、非鉄金属製造業、金属製品製造業が多いようです。

いずれにしても、自社の事業所等に水質汚濁防止法の特定施設がある場合は、トリクロロエチレンを取り扱っていないかどうかを確認し、該当する場合は改正排水基準に基づく対応ができているかどうかを確認することが必須です。

また、水質汚濁防止法の有害物質強化の動きについては、すでにこのコラムでも取り上げたことがありますが( 第23回「排水基準の有害物質規制が続々強化!〜規制基準の中身もしっかり見直しを」)、やはり法が規制対象とする物質を使用する際にはそれなりのリスクがあるということが今回の改正でもわかります。

社内で使用する物質が法の規制対象となる場合は、規制対象外の物質に代替できないかどうか検証する手順を設けている企業を見たことがありますが、法の規制対象となる有害物質を取り扱う企業では、改めてこうした規制強化の動きを踏まえた経営判断が重要となってくるでしょう。

(2015年10月)