ここに注目!環境法

【第31回】化学物質リスクアセスメント、企業は何をするか
〜改正労働安全衛生法の「指針」から考える

環境コンサルタント 安達 宏之 氏
(洛思社 代表取締役/環境経営部門 チーフディレクター)

平成26年の改正労働安全衛生法により、28年6月1日から化学物質のリスクアセスメントが義務化されます。 安全データシート(SDS)交付の対象物質となる化学物質等を取り扱う事業者にリスクアセスメントを行うことを求めているのです。

とはいえ、法律・政令・省令の関連条文を読みながら、具体的にどのように対応してよいのかわかりかねている事業者が多いようです。

この具体的な対応方法については、「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針」(27 年9月18 日公示)を読むとよくわかります。
指針では、リスクアセスメントからリスク低減措置の実施までの一連の措置の基本的な考え方や、具体的な手順の例を示しているのです。

事業者が行うべき事項を実務に即して手順化すると次のようになります。

(1)化学物質等による危険性又は有害性の特定
(2)特定された化学物質等のリスクの見積り
(3)見積りに基づくリスク低減措置の内容の検討
(4)リスク低減措置の実施
(5)リスクアセスメント結果の労働者への周知

以上のうち、(4)を除く事項はすべて法的な義務となります。(4)については、法令の規定による措置を講ずるほか、できる限り低減措置を実施するように努めることを求めています。

指針では、こうしたリスクアセスメントの実施体制について、安全衛生委員会などが設置されている場合はそこで調査審議させることを求めています。また、設置されていない場合でも、その業務をする労働者を参画させてリスクアセスメントを決定することも求めています。
つまり、本法に基づく組織や関係者抜きの実施体制は認められていません。

さらに、リスクアセスメントの実施時期についても、次のように考え方を示しています。

(1)次の場合は必ず実施すること(法的義務)
・化学物質等を原材料等として新規に採用し、又は変更するとき
・化学物質等の取り扱い作業の方法や手順を新規に採用し、又は変更するとき
・化学物質等によるリスクに変化が生じ、又は生ずるおそれがあるとき(SDS情報が変更されたときなど)

(2)次の場合は実施するよう努めること(努力義務)
・化学物質等の労働災害が発生したが、過去のリスクアセスメント等に問題がある場合
・前回のリスクアセスメント等から時間が経過し、設備等の経年劣化、労働者の入れ替わり等により知識経験の変化等があった場合
・既に取り扱っていた物質が規制対象として追加された場合など、過去にリスクアセスメント等を実施したことがない場合

なお、以上のうち、(2)の最後のケース(過去にリスクアセスメント等を実施したことがない場合)には、平成28年6月1日の改正法施行以前にも使用している化学物質等も含まれてきます。
しかし、問題発生の「リスク」を勘案すれば、事業者はできる限り従来から使用している化学物質等についても、リスクアセスメントを実施すべきでしょうし、実際にそのように対応している事業者が多いようです。

指針ではこのほかにも、工程ごとの実施を求めるなどの対象の選定、情報入手の方法、リスク見積方法や低減措置などについて、実施事項の詳細を具体的に記述しています。
事業者はこの指針を読みながら、効果的で対応しやすい方法を検討し、実施するとよいでしょう。

(2015年11月)