ここに注目!環境法

【第38回】伊勢志摩サミットと改正温対法
〜国内温暖化対策はどこへ向かうか?

環境コンサルタント 安達 宏之 氏
(洛思社 代表取締役/環境経営部門 チーフディレクター)

5月27日、G7伊勢志摩サミットが終了しました。厳戒態勢のことばかりが報じられ、その中身があまり理解されないまま終わったように感じます。

しかし、最終日に発表された首脳宣言を読むと、11の分野におけるコミットメントを提示し、そのうちの2つには地球温暖化・エネルギー問題が取り上げられていますので、環境部門の担当者はチェックしておくべきです。

首脳宣言では、温暖化・エネルギー問題について次のように各国がコミットすることを明らかにしました。

◆引き続き指導的な役割を担い、パリ協定の可能な限り早期の批准等に必要な措置をとる。2016 年中の発効との目標に取り組む
◆更なる野心を時間の経過とともに促進しつつ、自国が決定する貢献を、早期に透明性をもって、かつ、着実に実施することで先導する
◆5 年ごとに行う評価の検証に積極的に参加する
◆2020年の期限に十分先立って今世紀半ばの温室効果ガス低排出型発展のための長期戦略を策定し、通報する
◆温室効果ガスの削減を伴う経済成長を確保するため、エネルギー技術におけるイノベーションの支援並びにクリーンなエネルギー及びエネルギー効率の奨励に更に投資する

2015年12月に合意されたパリ協定では、温暖化防止への世界共通目標として、地球の平均気温上昇を産業革命前の水準に比べて2度よりはるかに低い水準に抑え、1.5度に抑制する努力をすることを掲げました。

そして、これを実現させるべく、主要排出国を含むすべての国が削減目標を5年ごとに提出し、その実施状況のレビューを受けることにしています。

首脳宣言では、パリ協定の重要性を改めて確認し、その実現に向けた強いイニシアティブを示したものと言えるでしょう。

一方、パリ協定合意を受けて、改正温暖化対策推進法が5月27日に公布されました。

改正法に関する国の説明資料を読むと、「家庭・業務部門における低炭素な「製品」「サービス」「ライフスタイル」の“賢い選択”を促すCOOL CHOICEを旗印に、重層的・波状的な普及啓発活動を展開していく」などと、意欲的な言葉が随所に散りばめられています。

しかし、改正事項そのものを冷静に見れば、「国民への普及啓発を更に一所懸命行います」という“宣言”にすぎないと言えるでしょう(普及啓発の予算は増えるでしょうが)。

なお、5月13日に閣議決定された温暖化対策計画では、2030年度に2013年度比で26%削減するとの中期目標について、国の施策等を示すとともに、期的目標として2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指すことを示していますが、個々の施策を見ると従来から提示されているものがほとんどのようです。

このように改正温暖化対策推進法や温暖化対策計画からは、企業への新たな規制措置は見えてきません。当面は従来通りの規制対策が講じられると見ておけばよいでしょう。

ただし、世界の趨勢は温暖化対策の強化に舵が切られており、そこに我が国も明確に参画していることが今回の伊勢志摩サミットで明らかになりました。

現状の対策でパリ協定が定める温暖化防止の目標を達成できないことは明らかなので、遅かれ早かれ対策が強化されることを念頭に、事業を営むことが企業関係者には求められます。

(2016年06月)