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【第41回】「マーキュリー・ミニマム」実現で上乗せ規制
~改正大気汚染防止法、「要排出抑制施設」規制とは?

環境コンサルタント 安達 宏之 氏
洛思社 代表取締役/ 環境経営部門チーフディレクター

9月7日、改正大気汚染防止法施行令等が公布されました。
これは、水銀に関する水俣条約(平成25年採択)を踏まえて、水銀規制を定めた改正大気汚染防止法に関連する政令等の改正となります。

今回の改正のポイントは次の通りです。

◆改正法の施行期日を平成30年4月1日(条約の発効が平成30年4月1日後となる場合は、条約の発効日)とした
◆「要排出抑制施設」に、鉄鋼製造施設のうち焼結炉及び電気炉を指定した

改正大気汚染防止法では、水銀規制として、(1)「水銀排出施設」規制、(2)「要排出抑制施設」規制の2つを定めています。

前者の規制では、石炭火力発電所など5つの規制対象に対して、届出義務を課した上で水銀の排出基準順守を義務付けます。
ちなみに、この対象施設(規模を含む)や届出内容、排出基準、測定方法などについては、すでに「水銀に関する水俣条約を踏まえた水銀大気排出対策の実施について(第一次答申)」(6月14日。文末にURL掲載)に明らかにされています。

後者の規制では、「要排出抑制施設」の施設設置者に対して自主的な水銀排出抑制の取組みを促すというものです。
「要排出施設」とは、「工場又は事業場に設置される水銀等を大気中に排出する施設(水銀排出施設を除く。)のうち、水銀等の排出量が相当程度多い施設であつて、その排出を抑制することが適当であるものとして政令で定めるもの」(18条の32)を指します。
今回の改正では、これらの施行日を確定させるとともに、後者の対象施設を定めました。

「要排出抑制施設」は、次の通りとなりました。
(1)製銑(せいせん)の用に供する焼結炉(ペレット焼成炉を含む)
(2)製鋼の用に供する電気炉
こうした施設設置者は、水銀等の大気中への排出に関し、単独で又は共同して、自ら順守すべき基準を作成しなければなりません。その上で、水銀濃度を測定し、その結果を記録し、これを保存するなど、排出抑制に必要な措置を講じます。さらに、実施状況及びその評価を公表しなければなりません。

なお、要排出施設の設置者が行うべきこれら「自主的取組」については、10月以降、中央環境審議会大気・騒音振動部会において、検討が進められる予定です。

この要排出抑制施設に関する措置は、水俣条約で各国が実施すべき措置として定められたものではありません。

8月22日までパブリックコメントが行われていた水銀環境汚染防止計画案では、水俣病を経験した我が国が、グローバルな「マーキュリー・ミニマム」の環境の実現に向けて世界をリードするため、条約の措置のみならずそれを上回る措置を講じることを宣言しています。
つまり、我が国独自の措置が、この要排出抑制施設の措置なのです。
日本政府の水銀規制にかける意気込みが伝わるものです。企業関係者も十分意識して対応すべきでしょう。

(2016年09月)