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【第46回】生物多様性の名古屋議定書締結へ指針案
〜名古屋議定書とは? ABS指針とは?

安達 宏之
洛思社 代表取締役/ 環境経営部門チーフディレクター

 平成29年1月20日、「遺伝資源の取得の機会及びその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分に関する指針(案)」のパブリックコメントが開始されました。
 政府は、通常国会に「名古屋議定書」の承認案を提出する意向を示しており、指針案は同議定書の締結に必要なものとされています。

 なかなか進まなかった名古屋議定書の締結に向けた動きなので、大きな注目が集まっています。その一方、諸外国の遺伝資源を事業で利用しない企業関係者にとっては、よくわからない動きと思われているかもしれません。
 そこで、今回は、名古屋議定書を巡る全体像を解説してみます。

 今から7年前の平成22年、愛知県名古屋市で生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が開かれました。この会議では、日本が議長国となり、「名古屋議定書」が採択されました。
 これは、正式名称を「生物の多様性に関する条約の遺伝資源の取得の機会及びその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分に関する名古屋議定書」と言います。

 この議定書の上位の条約となる生物多様性条約では、次の3つを目的としています。

生物多様性の保全
生物多様性の構成要素の持続可能な利用
遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分(ABS)

 議定書では、このうち、のABSの制度の詳細を定めたのです。

 遺伝資源は、医薬品や化粧品、食品などの製品開発にとって重要な意味を持つことがあります。かつては先進国が途上国の遺伝資源を一方的に活用してきました。

 これを是正しようとする考え方がABSです。つまり、遺伝資源を提供する国の側にも、その利用によって得られた利益を衡平に配分しようとするものです。

 そのために議定書では、利用国側に対して、提供国の法令に従い事前の同意が取得され、相互に合意する条件が設定されるよう、立法・行政上の措置等をとることなどを求めています。また、提供国側に対して、事前の同意制度の立法・行政上の措置等をとることなどを求めています。

 指針案では、主に利用国側としての措置を定めています。
 まず、遺伝資源の適法取得の報告制度を整備しています。

 具体的には、遺伝資源の取得者に対して、国際遵守証明書が国際クリアリングハウスに掲載された場合、その掲載日から6カ月以内に環境大臣に報告することを定めました。
 また、人の健康に係る緊急事態に対処するために遺伝資源を取得した場合は、事態収束から6カ月以内に環境大臣に報告することも定めました。
 環境大臣は、これら報告された情報を国際クリアリングハウス等に報告します。
 さらに、環境大臣等に対して、未報告者に報告を求めたり、指導及び助言を行ったりする事項も定めています。

 議定書は平成26年に発効しましたが、日本は、産業界が慎重な姿勢を示したために議定書の締結が今日まで遅れていました。
 しかし、このままでは締結国から遺伝資源を入手することに支障が出ることになりかねず、今回、国会への承認案提出に至ったと見られています。
 そして、議定書の締結に向けた措置の一環として、この指針案があるのです。

(2017年02月)

  • ◎「遺伝資源の取得の機会及びその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分に関する指針(案)」に関する意見募集(パブリックコメント)について(環境省)
    http://www.env.go.jp/press/103502.html