ここに注目!環境法

【第49回】アスベスト対策、本当に大丈夫ですか?
〜ガイドラインとマニュアル案公表

安達 宏之
洛思社 代表取締役/ 環境経営部門チーフディレクター

 平成26年6月に改正大気汚染防止法(大防法)と改正石綿障害予防規則(石綿則)が施行され、アスベスト(石綿)規制が大幅に強化されました。

 改正大防法では、建築物の解体などの工事において、工事受注者が対象となる石綿の有無を調査し、含有されている場合は発注者が届け出ることなどが義務付けられました。
 改正石綿則では、「吹付け石綿」だけでなく、石綿を含む「保温材、耐火被覆材、断熱材」の措置も強化しました。具体的には、労働者が就業する建築物などで石綿粉じんが発散するおそれがある場合は、保温材などの除去、封じ込め、囲い込みなどの措置を行わなければならなくなったのです。

 こうした改正によって法規制は強化されたものの、その後も、石綿飛散の事件が後を絶ちません。
 最近でも、札幌市で、小中学校の調理室用の煙突で石綿含有の断熱材が見つかり、一時は1万3000人を超える給食を作れない事態が大きなニュースとなりました。

 こうした中、平成29年4月28日、石綿に関するガイドラインとマニュアル案が、環境省より公表されました。
 いずれも法改正ではありませんが、建物を所有する事業者や建設会社などが注意すべきものです。

 ガイドラインの正式名称は、「建築物等の解体等工事における石綿飛散防止対策に係るリスクコミュニケーションガイドライン」です。

 これは、解体等工事に伴う石綿飛散に対する周辺住民の不安を解消し、より安全な解体等工事を進めるために、周辺住民等との間の円滑なリスクコミュニケーションの重要性が高まっていることを受けたものです。

 ガイドラインでは、解体等工事の発注者や自主施工者によるリスクコミュニケーションの手順として、次の5つを具体的に解説しています。
法・条例等の規定の確認
周辺地域に関する情報の収集
石綿の使用の有無に関する事前調査
リスクコミュニケーションを行うための準備
リスクコミュニケーションの実施

 想定するリスクコミュニケーションの手段としては、掲示、チラシ配布・回覧、戸別訪問、説明会などです。また、工事前、工事中、工事後の留意事項などもまとめています。
 さらに、石綿が飛散してしまった場合のリスクコミュニケーションの記述もあります。

 一方、マニュアル案とは、「災害時における石綿飛散防止に係る取扱いマニュアル」のことです。
 このマニュアル案は平成19年に策定されていましたが、その後、東日本大震災を踏まえて改訂版としてとりまとめられました。

 内容としては、災害発生時の応急対応の一つとして、住民・初動対応者への石綿への注意喚起の項目を追加するなど、主に自治体が行うべき対応手順を解説しています。

 ただし、平常時における準備として、平常時から自治体が石綿使用建築物等について適切に把握べきとの項目を追加するなど、建物の所有者が関連せざるをえない事項も多々あります。
 大規模災害時に自社の建物から石綿飛散が起こりうることを前提に、本マニュアル案を読みながら、現在の石綿対策が適切かどうかチェックする機会を持つべきでしょう。

 様々な事業所を訪問していると、保温材、耐火被覆材、断熱材に石綿が含まれているかどうか、その調査すらしていない事業所がまだまだ少なくないことを痛感します。
 しかし、石綿が事業所から飛散していることが明るみに出れば、大きな社会問題になることは避けられませんし、何よりも周辺住民と従業員の健康問題に直結する深刻な問題です。

 改めて法の規制事項に適切に対応しているかをチェックすることはもちろん、今回紹介したガイドラインなどにもしっかりと対応し、周辺住民の方々との信頼関係を深めるとともに、飛散防止対策の質を高めることが求められているのです。

(2017年05月)

  • ◎「建築物等の解体等工事における石綿飛散防止対策に係るリスクコミュニケーションガイドライン」の公表について(環境省)
    http://www.env.go.jp/press/104003.html
  • ◎「災害時における石綿飛散防止に係る取扱いマニュアル」の改訂に関するパブリックコメントの募集について(環境省)
    http://www.env.go.jp/press/104004.html