ここに注目!環境法

【第53回】温暖化規制は、条例の世界で密かに進む!?
〜静岡県温暖化対策条例の制度改正から見えるもの

安達 宏之
洛思社 代表取締役/ 環境経営部門チーフディレクター

 地球温暖化対策が今度どうなっていくのか。


 企業関係者の多くが気にしているこのテーマについて、本連載では、かつて取り上げたことがあります(「【第44回】パリ協定発効とトランプ大統領誕生」参照)。
 そこでは、紆余曲折があるにせよ、「それでも温暖化対策は進む」と結論づけました。


 では、国内の温暖化対策はどのように進んでいくのでしょうか。
 規制強化に向けた様々な動きはあるのでしょうが、そのうちの一つの重要なものとして、地方自治体による規制強化を見逃してはいけません。


 2017年4月から、静岡県地球温暖化防止条例で定める事業者規制の内容が変わりました。条例本体の改正ではなく、条例施行規則の改正であり、いわば「小さな改正」なのですが、注意すべき規定が追加されています。


 本条例は、2007年7月に施行されており、主な規制事項は次のものとなります。


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 大規模に温室効果ガスを排出している事業者に、「温室効果ガス排出削減計画書」を作成・提出させ、取組みの状況を報告させる。
 対象事業者は、県内に省エネ法の定期報告提出対象となる事業所(1事業所当たり原油換算で年1,500キロリットル以上のエネルギー使用)を有する事業者や、県内でトラック100台以上などを使用する道路運送業の事業者など。
 また、常時使用する従業員が1000人以上等で、自家用自動車通勤者が相当程度多い事業者に、「自動車通勤環境配慮計画書」を作成・提出させ、取組みの状況を報告させる。


機械器具の販売説明義務
 エアコン、電気冷蔵庫、テレビの販売の際、省エネラベルにより省エネ性能情報の表示・説明を行うことを求める。また、新車の販売の際にもその燃費等の説明を行わなければならない。


7築物に係る地球温暖化対策
 2,000平方メートル以上の建築物の新築、増改築を行おうとする建築主に、建築物環境配慮計画書等の提出を義務付ける。

 2016年10月に公布され、2017年4月に施行された改正条例施行規則では、,涼罎痢峅梗叱果ガス排出削減計画書」制度の改正をしています。

 本改正では、主に2点の改正を行っています。なお、規制対象事業者に変更はありません。

 1つは、計画書の記載内容をさらに充実させようとしていることです。従来、省エネ対策の記載項目は自由記載でしたが、これを選択肢で示し、記載を必須化させました。
 また、「エネルギー使用状況」欄等を新設し、県による事業者の省エネ対策の実態把握を可能としています。

 もう1つは、報告書の記載内容もさらに充実させようとしていることです。事業者自身の自己評価について、点数を付すことを求めています。
 さらに、温室効果ガス排出量等の「増減要因」欄や、実施した措置や今後実施する改善措置を整理する「総括」欄を新設し、事業者自らの分析を促進させようとしています。

 静岡県の条例では、他の都道府県の条例と同様に、事業者が提出した計画書や取組み状況の概要が県のウェブサイトで公表されています。
 今回、これに加えて、事業者自身に自らの取組み状況を採点させることなどによって、自社の温暖化対策がさらに「見える化」されたわけです。事業者自らが取り組み状況を検討する材料とさせるとともに、県の指導もより容易になったと言えるでしょう。

 こうした条例の規制強化の動きは、静岡県だけではありません。
 例えば、2014年4月に施行された改正長野県地球温暖化対策条例では、事業者が提出する温暖化対策の計画や実施状況の報告に対して、県が評価し、その結果を公表し、取組みの指導等を行えるようにしています。

 東京都では、環境確保条例により、大規模に温室効果ガスを排出する事業者に対して、その総量を削減させることを義務付けています。義務付けられた削減量を確保できなくなったときは、他社が削減した分を買い取ることを義務付けるという、キャップ・アンド・トレード方式の排出量取引制度も整備しています。
 この制度も順調に推移し、2015年より「第2計画期間」に入っています。

 国内の温暖化対策を見るとき、国の動向だけでなく、自治体の動向にも注意を払うべきでしょう。温暖化対策は、まだまだ強化されます。

(2017年09月)