環境コラム

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環境コンサルタント講師の解説による、環境法のポイントをご紹介します。

執筆:環境コンサルタント 安達宏之氏 (洛思社 代表取締役/環境経営部門 チーフディレクター)

安達宏之氏
プロフィール
2002年より現職。主なテーマは「企業向け環境法」「環境経営」。
執筆のほか、企業の法令管理システムやISO14001等の構築、個別調査・コンサルティングなどを行う。
ISO14001主任審査員として、審査業務にも携わる。
各地で企業の環境法担当者向けの環境法セミナー講師を務める。

【第52回】化学物質リスクアセスの対象、更に追加
~労働安全衛生法の化学物質規制が再々強化へ!?

安達 宏之氏
洛思社 代表取締役/ 環境経営部門チーフディレクター

 平成29年7月24日、厚生労働省の労働政策審議会から「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令案要綱」と「労働安全衛生規則の一部を改正する省令案要綱」に関する答申が出されました。
 この答申では、労働安全衛生法に基づく化学物質規制を更に強化することが提示されたので注意しなければなりません。

 まず、本法の主な化学物質規制をまとめておきましょう。
 本法では、化学物質の健康障害の重大性に応じて、次の3段階に分けて規制措置を講じています。

①重度の健康障害がある化学物質への規制
 アスベスト(石綿)など8物質が対象。
 重度の健康障害を招く化学物質に対して、製造を禁止しています。

②健康障害が多発する化学物質への規制
 ベンゼンなど121物質が対象。
 健康障害が多発しうる化学物質に対して、特化則(特定化学物質障害予防規則)などの特別規則で規制する。
 また、SDS(安全データシート)交付義務、ラベル表示義務、リスクアセスメント義務を課す。

③健康障害が発生する化学物質への規制
 663物質(現時点)が対象。
 一定の危険・有害な物質であり、健康障害が発生しうる化学物質に対して、SDS交付義務、ラベル表示義務、リスクアセスメント義務を課す。

 今回の答申では、上記規制のうち、③の対象物質ついて、新たに、次の化学物質を追加することが提示されました。


・アスファルト
・1―クロロ―2―プロパノール
・2―クロロ―1―プロパノール
・結晶質シリカ
・ジチオりん酸O,O―ジエチル―S―(ターシャリ―ブチルチオメチル)(別名テルブホス)
・フェニルイソシアネート
・2,3―ブタンジオン(別名ジアセチル)
・ほう酸
・ポルトランドセメント
・2―メトキシ―2―メチルブタン(別名ターシャリ―アミルメチルエーテル)
・硫化カルボニル


 追加される規制対象は、上記物質とともに、これらを含有する製剤その他の物も含まれます。なお、シリカについては、非晶質シリカを除外するため、「シリカ」を削除し「結晶質シリカ」が追加されます。


 本法の化学物質規制は、平成28年6月に新たなステージに入っています。
 具体的には、640の化学物質(当時の上記②及び③の対象物質)に対して、化学物質のリスクアセスメントを義務付けるという厳しい規制を課しました(化学物質リスクアセスメント規制の概要は、本連載31回目を参照してください)。


 多くの事業者がこの新しい規制対応に翻弄される中、その後、1年も経たないうちに、対象物質が追加されています(平成29年3月施行で27物質追加。詳しくは、本連載36回目を参照してください)。


 今回の答申では、こうした状況の中で、更に対象物質が追加されることになります。
 対策に抜け漏れがないよう、今一度、取扱い化学物質の精査と対策が事業者には求められていると言えるでしょう。


 今後、労働安全衛生法施行令と労働安全衛生規則の改正が行われることになります。


 施行日は、平成30年7月1日を予定しています(非晶質シリカを除外する改正については公布の日)。
 ただし、この政令の施行の際現に存在する追加対象物質については、名称等の表示義務に係る法第57条第1項の規定は、平成30年12月31日まで適用しないこととされています。


 下記のリンク先には、同改正で規定される予定の裾切値の案も公表されていますので、対象物質を取り扱う事業者は、確認しておくとよいでしょう。含有量が裾切値未満の場合、上記義務の対象とならなくなります。

(2017年08月)

  • ◎「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令案要綱」と「労働安全衛生規則の一部を改正する省令案要綱」の諮問と答申(厚生労働省)
    http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000172265.html

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