環境コラム

コラム環境コラム

環境コンサルタント講師の解説による、環境法のポイントをご紹介します。

執筆:環境コンサルタント 安達宏之氏 (洛思社 代表取締役/環境経営部門 チーフディレクター)

安達宏之氏
プロフィール
2002年より現職。主なテーマは「企業向け環境法」「環境経営」。
執筆のほか、企業の法令管理システムやISO14001等の構築、個別調査・コンサルティングなどを行う。
ISO14001主任審査員として、審査業務にも携わる。
各地で企業の環境法担当者向けの環境法セミナー講師を務める。

【第56回】データ改ざんなど、測定不正事件のその後
~改正大気汚染防止法・水質汚濁防止法の検証

安達 宏之氏
洛思社 代表取締役/ 環境経営部門チーフディレクター

 現在、大企業及びそのグループ企業における品質不正事件が相次いで明らかとなり、大きな社会問題となっています。


 実は、いまから10年ほど前(平成17年~21年頃)、大気汚染防止法や水質汚濁防止法の測定義務に関連して、やはり大企業を含めた一部の企業において、測定データの改ざんなどの不正事件が続々と判明しました。


 国はこれに対応するため、平成22年5月、大気汚染防止法(大防法)と水質汚濁防止法(水濁法)を改正しました。

 改正大防法では、ばい煙発生施設を設置する事業者に対して、ばい煙量等の測定結果の記録に加えて、その記録の保存も義務付けました。また、測定の記録を行わなかったり、虚偽の測定をしたり、記録を保存しなかったりした場合は、罰則(30万円以下の罰金)を適用することにしました。

 改正水濁法も同様です。特定施設を設置する事業者に対して、排出水等の汚染状態の測定結果の記録に加えて、その記録の保存も義務付けました。また、未記録、虚偽記録、記録の未保存には大防法と同様の罰則を設けました。さらに、測定項目や測定頻度が明確化されました。

 平成29年10月31日、中央環境審議会水環境部会において、「改正水質汚濁防止法の施行後5年経過における検証について」という報告書が提示されました。改正大防法については、既に5月31日に中央環境審議会大気・騒音振動部会に同様の報告書が提示されており、これで、両改正法への検証結果がすべて出そろったことになります。

 これらを読むと、今回の検証によって新たな法改正につながることは無いようですが、今後事業者が注意すべき点がいくつか明らかになったと思います。

 報告書によれば、まず、2つの法令とも、23年度以降、測定結果の未記録、虚偽の記載又は未保存に関して都道府県が告発を行った例はありませんでした。

 しかし、行政指導の件数は、大防法の場合、27年度の件数で、未記録4件、未保存38件、虚偽記録1件ありました。なお、27年度時点で、立入検査実績は約1万4000件でした。
 水濁法の場合、23~27年度の5年間の件数で、未測定2110件、未記録113件、未保存175件、虚偽記録2件ありました。なお、27年度時点で、立入検査実績は約3万8000件でした。

 こうした状況について報告書では、告発に至った例はないものの、未記録、未保存、虚偽記録が行われた事例があり、都道府県等の指導により改善が図られているとし、本改正が効果を上げたことを評価しています。

 このように、法改正によって測定義務違反への罰則適用の事態はありませんでしたが、2つの法令とも、行政指導の多さには目を見張るものがあります。

 日ごろから測定義務に適切に対応することはもちろん、万が一の違反発覚に至らぬよう、順守評価や内部監査などの様々な機会を捉えて、担当部門で滞りなく適切な測定を実施していることを確認すべきでしょう。
 その際、漫然と測定状況を聞くのではなく、法が求める測定方法、測定頻度に基づいて実施していること、過去3年分の所定の測定結果を保存していることなど、法に基づく具体的な対応方法を確認すべきです。

 なお、今回紹介した報告書には、上記以外の改正事項についても施行状況を検証しています。
 このうち、例えば、改正水濁法により拡大された事故時の措置の検証結果の中で、特定施設や指定施設、貯油施設等からの有害物質・指定物質・油の流出事故が跡を絶たない状況が確認できます。環境汚染防止に向けて、事業者がいかに緊急事態に対応することが大切なのかよくわかります。

(2017年12月)

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