環境コラム

コラムここに注目!環境法

環境コンサルタント講師の解説による、環境法のポイントをご紹介します。

執筆:環境コンサルタント 安達宏之氏 (洛思社 代表取締役/環境経営部門 チーフディレクター)

安達宏之氏
プロフィール
2002年より現職。主なテーマは「企業向け環境法」「環境経営」。
執筆のほか、企業の法令管理システムやISO14001等の構築、個別調査・コンサルティングなどを行う。
ISO14001主任審査員として、審査業務にも携わる。
各地で企業の環境法担当者向けの環境法セミナー講師を務める。

【第61回】国の環境政策が新しいステージへ入った!?
~第5次環境基本計画が閣議決定。そのポイントは? !

安達 宏之氏
洛思社 代表取締役/ 環境経営部門チーフディレクター

2018年4月17日、第5次環境基本計画が閣議決定されました。

 環境基本計画とは、「環境の保全に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、環境の保全に関する基本的な計画」のことです(環境基本法15条)。いわば、国の環境政策の基本的な方向性や施策を示しています。

 前回の第4次計画が策定されたのは、2012年でした。前回は、東日本大震災・福島原発事故から1年あまりで策定されたものでしたが、あれから6年経ちました。
 エネルギーや地球温暖化の問題を始め、内外の社会経済の変化が激しさを増している中で、今回の計画改定に至ったのです。

 前回の計画が策定されてからの最大の動きは、やはりパリ協定でしょう。2015年12月にパリ協定が採択され、国際社会は、地球の気温上昇を2度(努力目標1.5度)に抑えるという「2度目標」を掲げ、21世紀後半には、温室効果ガスの排出を実施ゼロにすることを目指すことになりました。
 この枠組みは、2020年にスタートすることになっています。

 また、「SDGs」の採択と急速な普及・浸透も見逃せない動きです。
 SDGsとは、「持続可能な開発目標」のことであり、2015年9月の国連サミットで採択されたものです。2016年から2030年までの国際目標であり、持続可能な世界を実現するための17のゴールと169のターゲットが提示されています。

 環境省によれば、これら17のゴールのうち、少なくても12のゴールが環境に関連したものであるとされており、環境政策にとっても関連性の深いものです。
 様々な企業を訪問していると、SDGsと自社との関係性を精査し、事業活動や環境活動を見直す動きが日々強まっていることを実感しています。

 こうしたパリ協定やSDGsの動きを踏まえて、第5次環境基本計画では、分野横断的な次の6つの「重点戦略」を設定し、具体的な施策の方向性を示しています。

 ①持続可能な生産と消費を実現するグリーンな経済システムの構築
 ②国土のストックとしての価値の向上
 ③地域資源を活用した持続可能な地域づくり
 ④健康で心豊かな暮らしの実現
 ⑤持続可能性を支える技術の開発・普及
 ⑥国際貢献による我が国のリーダーシップの発揮と戦略的パートナーシップの構築

 上記①~⑥は、一見すると環境政策とどう関係があるのかがわかりづらいかもしれません。
 これは、環境政策が、他の政策と交わることなく存立するものではない。むしろ、融合しながら社会全体の発展を目指していく。そうした考え方なのでしょう。
 環境政策が、イノベーションの創出につながり、かつ、経済・社会的課題も「同時解決」していこうとするものです。環境政策による「成長戦略」と言えるかもしれません。

 また、地域の活力を最大限に発揮する「地域循環共生圏」の考え方も新たに提唱しています。これも、環境政策と地域政策を融合させることによる相乗効果を狙っていると言えるでしょう。

 環境基本計画に対しては、「各省庁の環境関連の施策が詰め込んだだけ」などと揶揄されることも少なくありません。
 しかし、企業担当者にとって、自社の環境活動を考える上で参考になる考え方や情報も多いと思います。特に、今回のように計画が新しくなった場合は、国の政策の今後をチェックできるので、計画の内容を確認してみるとよいでしょう。

(2018年05月)

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