環境コラム

コラムここに注目!環境法

環境コンサルタント講師の解説による、環境法のポイントをご紹介します。

執筆:環境コンサルタント 安達宏之氏 (洛思社 代表取締役/環境経営部門 チーフディレクター)

安達宏之氏
プロフィール
2002年より現職。主なテーマは「企業向け環境法」「環境経営」。
執筆のほか、企業の法令管理システムやISO14001等の構築、個別調査・コンサルティングなどを行う。
ISO14001主任審査員として、審査業務にも携わる。
各地で企業の環境法担当者向けの環境法セミナー講師を務める。

【第62回】海洋・再エネビジネス拡大へ、新たな法案提出!~海洋・再エネ海域利用促進法とは?

安達 宏之氏
洛思社 代表取締役/ 環境経営部門チーフディレクター

 2018年の通常国会にも、様々な環境関連法案が提出されています。
 環境規制を強化しようとする省エネ法やオゾン層保護法の改正法案が注目されていますが、今後の環境分野のビジネス拡大につながる法案も審議されています。
その中に、「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律案」があります。

 本法案は、題名の通り、海洋における再生可能エネルギー(再エネ)の発電設備の整備を進めるためのものです。そのために、基本方針の策定や促進区域の指定、区域内における占用計画の認定制度について定められています。

 再エネの普及は、地球温暖化対策を推進する上でも重要な施策となりますが、陸域におけるその大規模な普及には、地域環境との調和など、様々な課題があります。
そうした中で、国土を海で囲まれたわが国では、海洋再エネ発電の普及は、大規模な開発の可能性があります。

 一方、こうした発電設備を整備するためには、長期にわたって海域を占用する必要性がありますが、現状ではそうしたルールがありませんでした。普及に向けた制度の整備が求められていたのです。

 そこで、本法案では、国は、基本方針を定め、海洋再エネ発電設備の整備を図るために、利用を促進するために区域を指定し、これに関わる先行利用者との調整の枠組みを定めています。

 また、公募により事業者を選定し、供給価格の低減を図るとともに、長期の占用を実現するための手続きを定めています。

 手続きの流れは、概ね次の通りとなります。

 ①内閣総理大臣:基本方針を作成し、政府が閣議決定
 ②経済産業大臣・国土交通大臣:促進区域を指定、公募占用指針を策定
 ③事業者:経済産業大臣・国土交通大臣に公募占用計画を提出
 ④経済産業大臣・国土交通大臣:公募占用計画の提出者を選定、計画を認定
 ⑤事業者:認定された公募占用計画の内容に基づきFIT認定を申請
 ⑥経済産業大臣:FIT法(「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」)に基づき認定
 ⑦事業者:認定された公募占用計画に基づき占用の許可を申請
 ⑧国土交通大臣:30年を超えない範囲内において占用を許可

 国は、本法案による施策展開により、海域における再エネの導入拡大を目指しています。
 具体的には、風力発電については、現状が約330万kWの導入容量であるのに対して(2016年度)、これを2030年度には約1,000万kWに拡大しようとしています。
 また、促進区域数を2030年度には5区域設ける方向で検討しています。

 2012年以降、わが国では急激に再エネが普及してきました。特に太陽光発電が顕著です。

 これは、2012年スタートのFIT法による影響によるものです。同法が「固定価格買取(FIT)制度」を創設し、再エネによる売電事業が急速に拡大しました。太陽光発電の場合であれば、2016年には、2012年比約2.5倍という導入量に達しています。

 新法ができることによるインパクトは、私たちが想像する以上に大きなものになることがあります。それは、マイナス面(リスク)の増加につながることももちろんありますが、逆に、ビジネスチャンスにつながることもあります。

 しかし、ビジネスチャンスにつながる法案を見逃すことも珍しくありません。新法や法改正を追っている企業関係者は、こうしたビジネス系の環境法もきちんと追っていくことも時には求められているのです。


(2018年06月)


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