環境法 こんなときどうする?

コラム環境法 こんなときどうする?

環境コンサルタント講師の解説による、環境法のポイントをご紹介します。

執筆:環境コンサルタント 安達宏之氏 (洛思社 代表取締役/環境経営部門 チーフディレクター)

安達宏之氏
プロフィール
2002年より現職。主なテーマは「企業向け環境法」「環境経営」。
執筆のほか、企業の法令管理システムやISO14001等の構築、個別調査・コンサルティングなどを行う。
ISO14001主任審査員として、審査業務にも携わる。
各地で企業の環境法担当者向けの環境法セミナー講師を務める。

【第1回】法の「事故時の措置」は緊急事態手順とリンクさせる

安達 宏之氏
洛思社 代表取締役/ 環境経営部門チーフディレクター

 企業の環境部門にとって頭の痛いテーマと言えば、まず「法律」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。

 環境法は、法令の種類も多く、かつ法改正も多い分野です。情報を追い、自社の対応方法を決めて、実際に対応することは、なかなか大変な作業となります。

 また、自社が対応すべき規制内容を把握したとしても、それに対して、自社が、具体的にどのように対応すればよいのかわからずに悩む担当者も少なくありません。

 本連載では、こうした実務を担う企業の環境部門の方々向けに、毎回、環境法の個々の規制事項を取り上げながら、企業がどのように対応すべきかをわかりやすく解説していきます。

 初回は、多くの環境法に定められた「事故時の措置」への対応方法です。

 環境法には、次の図表のように、「事故時の措置」を定める法律が少なくありません。

図表:環境法が定める「事故時の措置」(例)
法令名 事故時の措置 備考
大気汚染防止法 事故でばい煙特定物質を排出させた施設がある場合、応急措置と都道府県知事等に通報 特定物質:アンモニアなど28物質
水質汚濁防止法 事故で有害物質指定物質、油等を流出させた施設がある場合、応急措置と都道府県知事等に届出 有害物質:カドミウムなど28物質
指定物質:トルエンなど56物質
悪臭防止法 事故で規制基準に適合しないおそれが生じた場合、応急措置と市町村長に通報 -
悪臭防止法 事故で規制基準に適合しないおそれが生じた場合、応急措置と市町村長に通報等 -
廃棄物処理法 事故で廃棄物が飛散等した廃棄物処理施設等は、応急措置と都道府県知事等に届出 -
毒劇法 毒物劇物営業者特定毒物研究者、業務上取扱者は、事故で毒劇物が飛散等した場合、保健所、警察署又は消防機関に届出と応急措置 -
 個々の事故時の措置について、もう少し詳しく解説します。

 悪臭防止法では、規制地域内に事業場を設置している者に対して、事故が発生し、悪臭原因物の排出が規制基準に適合せず、又は適合しないおそれが生じたときは、次の3点を実施することを義務付けています。

①直ちに応急措置を講じる
②直ちに事故状況を市町村長へ通報する
③事故を速やかに復旧する

 当たり前のことですが、事故が生じて環境汚染が発生した場合、まずは応急措置を講じることになります。多くの環境法でも、そうした応急措置を直ちに行うことを定めた上で、関連する行政への通報等を定めているわけです。

 また、水質汚濁防止法の場合は、応急の措置を講ずるとともに、速やかにその事故状況や講じた措置の概要について都道府県知事に届け出ることを義務付けています。

 多くの企業、特に工場を持つ企業では、事故によって環境汚染が生じた場合の緊急事態への対応手順をまとめた「緊急事態手順書」などの文書を持っています。
 そうした手順書の内容を見ると、上記のような関連する環境法の規制事項がきちんと反映されていないことが少なくありません。
 事故による悪臭の飛散対策を定める手順書に、市町村長への通報の規定が抜けていた事案を見たことがあります。

 また、環境法が定める「事故時の措置」の対象が意外と広いことにも注意すべきです。

 水質汚濁防止法の「事故時の措置」では、同法の特定施設による事故時の措置だけでなく、①28の有害物質、②56の指定物質、さらに、③油の流出による水質事故も対象にしています。
 「ウチの工場は水濁法の特定施設が無いから、同法は関係ない」と安易に思わず、こうした物質を取り扱っていないか、きちんとチェックして、必要に応じて手順書をまとめるべきでしょう。

 さらに、通報や届出を行う場合の明確な基準を環境法は示していません。

 水質汚濁防止法の有害物質・指定物質対策では、「有害物質又は指定物質を含む水が当該指定事業場から公共用水域に排出され、又は地下に浸透したことにより人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがあるとき」に応急措置等を講じることを定めているだけです。
 「人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれ」を企業自ら判断しなくてはいけません。

 そこで、どのような場合に応急措置や通報・届出を行うかという基準を社内でまとめておくとよいと思います。
 ある工場では、明確な「基準」が示しづらかったために「近隣からの苦情が起こりうるレベル」と設定し、担当部門がそれに近い状態が生じたと判断した場合、工場長へ報告し、あらかじめ定められている検討グループで協議し、その結論を出す手順を整備していました。

 このように、環境法の「事故時の措置」への対策を検討するときは、「自社の緊急事態の手順に落とし込むとどのようになるのだろうか」という視点をしっかり持つとよいでしょう。

参考文献
安達宏之『企業と環境法 ~対応方法と課題』(法律情報出版)


(2018年09月)

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