環境法 こんなときどうする?

コラム環境法 こんなときどうする?

環境コンサルタント講師の解説による、環境法のポイントをご紹介します。

執筆:環境コンサルタント 安達宏之氏 (洛思社 代表取締役/環境経営部門 チーフディレクター)

安達宏之氏
プロフィール
2002年より現職。主なテーマは「企業向け環境法」「環境経営」。
執筆のほか、企業の法令管理システムやISO14001等の構築、個別調査・コンサルティングなどを行う。
ISO14001主任審査員として、審査業務にも携わる。
各地で企業の環境法担当者向けの環境法セミナー講師を務める。

【第2回】届出義務には2種類ある

安達 宏之氏
洛思社 代表取締役/ 環境経営部門チーフディレクター

 多くの企業では、自社に適用される環境法の規制を一覧化しています。ISO14001認証取得企業の場合、このリストを「法規制登録簿」などと呼んでいます。

 様々な企業の法規制登録簿を見ていると、時折、次のような記述を見ることがあります。

大気汚染防止法 ばい煙発生施設(ボイラー) 設置・変更・廃止等の届け出を行うこと
 法規制登録簿の書き方に「正解」はありません。
 適用される法規制の具体的な内容が記載されており、各企業が確実かつ効率的に法順守を行うことができればよいのです。

 上記の例についても、これを直ちに誤りとすることはできません。ただし、注意すべきことがあります。
 実際の大気汚染防止法の届出規定の条文を見ながら考えてみましょう。

 本法6条1項では、「ばい煙を大気中に排出する者は、ばい煙発生施設を設置しようとするときは、環境省令で定めるところにより、次の事項を都道府県知事に届け出なければならない。」と定めています。

 一方、本法11条では、「第6条第1項又は第7条第1項の規定による届出をした者は、その届出に係る第6条第1項第1号若しくは第2号に掲げる事項に変更があつたとき、又はその届出に係るばい煙発生施設の使用を廃止したときは、その日から30日以内に、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。」と定めています。

 2つの条文の違いがわかるでしょうか。

 よく読み返してみると、6条1項では、「ばい煙発生施設を設置しようとするとき」と書いてあるので、届出は、設置する前に行うこととなっています。
 一方、11条では、所定の届出事項に「変更があつたとき」、又は「ばい煙発生施設の使用を廃止したとき」と書いてあるので、届出は、事後に行うことになっています。

 前者は事前に、後者は事後に届出を行うということなので、同じ届出義務でも、届出のタイミングが異なることがわかります。

 特に気をつけなければならない届出義務は、本法6条1項を含む、ばい煙発生施設の設置や構造等の変更に関するものです。
 本法10条では、「第6条第1項の規定による届出をした者又は第8条第1項の規定による届出をした者は、その届出が受理された日から60日を経過した後でなければ、それぞれ、その届出に係るばい煙発生施設を設置し、又はその届出に係るばい煙発生施設の構造若しくは使用の方法若しくはばい煙の処理の方法の変更をしてはならない。」と定めています。

 設置や構造等の変更を行おうとする場合は、その約2カ月前には届出を行わなければならないのです。

 本法では、この約2か月間の間に限って、都道府県知事に対して、届出があったばい煙発生施設のばい煙量などが排出基準に適合しないと認めるときは、届出受理日から60日以内に限って施設の構造等に関する計画変更や施設設置に関する計画の廃止を命ずることをできる規定を設けています(9条)。

 つまり、本法では、ばい煙発生施設の設置や構造等の変更は、大気汚染を招きかねないことから、事前に届出をさせ、そのようにならないことを都道府県知事がチェックすることになっているのです。

 ところが、こうした約2カ月前の届出義務があることを知らずに、対象施設を設置したり、その構造等を変更したりして、後になって届出義務違反を知る企業が時折見られます。 

 こうした規制があることをしっかりと認識するとともに、施設や設備の設置又は構造等の変更の際には、必ず適用される法令が無いかどうかを確実にチェックする仕組みが不可欠なのです。

 一方、代表者氏名の変更など、届出事項の軽微な変更や施設の廃止については、大気汚染を招くわけではありません。ただし、届出先の管理という意味では放っておくわけにもいかないので、これら事項が発生してから30日以内の届出を義務付けています。

 以上のように、一言で「届出」と言っても、環境汚染のおそれに照らして2種類の「届出」があるのです。
 したがって、届出制度に適切に対応するためには、2種類に分けて管理するのがよく、法規制登録簿についても、例えば次のような体裁にするのが無難と思われます。

図表:ばい煙発生施設の届出義務(例)
対象施設 届出義務の内容
2号棟のボイラー(ばい煙発生施設) 設置・構造等の変更をする場合、その約2カ月前には届出を行うこと
施設の軽微な変更(代表者名など)や廃止、承継の場合、事由発生後30日以内に届出を行うこと

 もちろん、上記の表は一例にすぎません。冒頭で掲げたような体裁でもかまいません。
 ただ、そのようにするのであれば、例えばボイラーの手順書等では、届出制度が2種類あることを前提にした内容にすべきと思われます。

参考文献
安達宏之『企業と環境法 ~対応方法と課題』(法律情報出版)
http://www.kankyobu.com/sp/book3.htm


(2018年10月)

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