環境コラム

コラム環境コラム

環境コンサルタント講師の解説による、環境法のポイントをご紹介します。

執筆:環境コンサルタント 安達宏之氏 (洛思社 代表取締役/環境経営部門 チーフディレクター)

安達宏之氏
プロフィール
2002年より現職。主なテーマは「企業向け環境法」「環境経営」。
執筆のほか、企業の法令管理システムやISO14001等の構築、個別調査・コンサルティングなどを行う。
ISO14001主任審査員として、審査業務にも携わる。
各地で企業の環境法担当者向けの環境法セミナー講師を務める。

【第13回】EMSの「意図した成果」とは何か?
~ISO14001:2015年版「1 適用範囲」を読む

環境コンサルタント 安達 宏之 氏
(洛思社 代表取締役/環境経営部門 チーフディレクター)

ISO14001:2015年版では、いくつかの箇所で「意図した成果」という用語が登場します。

例えば箇条4.4では、「意図した成果」を達成するため、組織は、この規格の要求事項に従って環境マネジメントシステム(EMS)を確立・実施・維持し、かつ継続的に改善することを要求しています。
EMSの構築・運用を成功させるためには、「意図した成果」を正確に理解しなくてはならないわけです。

「意図した成果」については、箇条1「適用範囲」で記述されています。ここでは、EMSの意図した成果は、組織の環境方針に整合して、次の事項を含むこととされています。
①環境パフォーマンスの向上
②順守義務を満たすこと
③環境目標の達成

ちなみに、2015年版において新しく登場した用語である「順守義務」という意味は、2004年版の「法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項」と同じです。つまり組織に適用される法令などを順守することが、意図した成果の一つとして位置づけられていることになります。

これら3つの意図した成果について、EMSを運用する際には必ず心がけるようにしたいものです。例えば、ISO事務局として、あるいは内部監査員などとして、これらを頭の片隅に置きながらEMS活動を眺め、EMSの有効性について考えながら活動するとよいでしょう。

EMSを運用していると、どうしても目先の結果や細かな文書類の整合性などに目が行ってしまいます。そうなると、EMSが自社にとって有効なものなのかどうかという視点を失いがちになってしまいます。EMS活動の様々な場面でこれを防ぐ必要があるのです。

また、規格の附属書A(規格の利用の手引)にも述べられているように、上記の3つはあくまでも最低限の意図した成果です。
これらに加えて、組織は、自らの必要性を勘案して、追加の意図した成果を設定することもできます。

附属書Aでは、例えば、環境保護へのコミットメントと整合して、組織は、持続可能な開発に取り組むための意図した成果を確立してもよいと述べています。

ISO14001:2004年版から2015年版へ移行させる際、「自社にとって、EMSの成果とは何か」をしっかり考えておきたいものです。

箇条1では、以上の他に、次の記述も重要と思われます。

・この規格は、規模、業種・形態及び性質を問わず、どのような組織にも適用できること
・この規格は、組織が決定した、組織の活動、製品及びサービスの環境側面に適用すること
・この規格は、特定の環境パフォーマンス基準を規定するものではないこと

規格の内容は、様々な組織に適用できるようにするために、ある程度抽象的にならざるをえません。また、規格の意図した成果の一つに環境パフォーマンスの向上があるとしても、その中身を規定しているわけでもありません。

つまり、これらから読み取れることとは、この規格は、組織に対して決して狭い要求をしているわけではなく、かなりの範囲において組織の自主性に委ねているということです。 それを意識した、「自分たちなりのEMSの姿」を考えてみるとよいでしょう。

(2015年12月)

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