環境コラム

コラム環境コラム

環境コンサルタント講師の解説による、環境法のポイントをご紹介します。

執筆:環境コンサルタント 安達宏之氏 (洛思社 代表取締役/環境経営部門 チーフディレクター)

安達宏之氏
プロフィール
2002年より現職。主なテーマは「企業向け環境法」「環境経営」。
執筆のほか、企業の法令管理システムやISO14001等の構築、個別調査・コンサルティングなどを行う。
ISO14001主任審査員として、審査業務にも携わる。
各地で企業の環境法担当者向けの環境法セミナー講師を務める。

【第16回】都合のよい「適用範囲」になっていないか?
~ISO14001:2015年版「4.3環境マネジメントシステムの適用範囲の決定」等を読む

環境コンサルタント 安達 宏之 氏
(洛思社 代表取締役/環境経営部門 チーフディレクター)

最近、ISO14001:2015年版への移行を考える企業の方々からのご相談が急に増えています。
2015年版への基礎的な理解が進み、そろそろ具体的な移行に向けた検討に入りつつある企業が増えているのかもしれません。

規格そのものが変わるということは滅多にないことなので、これまでなかなか手を付けられなかった環境マネジメントシステム(EMS)の骨格を組み立て直す機会にしようとする企業も少なくありません。そして、その骨格の一つであるEMSの適用範囲も見直そうという声も聞かれます。
環境経営をさらに前進させるための取組みであれば喜ばしい限りですが、私が若干気にしているのは、適用範囲の見直しを検討している企業の一部で、その範囲を意図的に狭めようという動きも散見されることです。
適用範囲について、ISO14001:2015年版では、箇条4.3「環境マネジメントシステムの適用範囲の決定」を定めていますが、そこで見られる規格の意図はむしろ逆です。

ここでは、EMSの適用範囲を定める際、次の5点を考慮することを求めています。
①外部及び内部の課題 ②利害関係者のニーズ及び期待のうち、順守義務 ③組織の単位、機能及び物理的境界 ④組織の活動、製品及びサービス ⑤管理し影響を及ぼす、組織の権限及び能力

ここで重要なのは、①と②です。これまで述べてきたように、本業とEMSを統合することを目指し、2015年版では組織を取り巻く状況を経営レベルで把握し、それをEMSに落とし込んでいくことを求めています。 適用範囲の決定の際にもそれを要求しているというわけです。
さらに、これに続き、適用範囲の中にある組織の全ての活動、製品及びサービスがEMSに含まれている必要があることも明記しています。 意図的に一部の活動、製品及びサービスをEMSから外すことは認められないということです。

こうした規定がある以上、本業に照らして不自然な形でEMSの適用範囲を狭めるということは、やはり問題があると言わざるをえません。

この点について「チェリーピッキング」という言葉がよく使われます。 たくさんあるサクランボの中から、おいしそうなサクランボばかりをつまみ食いすることにちなみ、都合のよいことだけを取り上げることを指します。
例えば印刷業において、規模の大きなグラビア印刷機などがあるにもかかわらず印刷工程へのEMSの適用を除外し、デザインや営業等のみを適用範囲にすることは、本業に沿った形での適用範囲とはとても言えないでしょう。まさに、チェリーピッキングなのです。
規格の趣旨をよく理解した上で、適用範囲の検討を行うことが求められます。

さて、箇条4.3は上記に続き、適用範囲を文書化した情報として維持し、かつ、利害関係者が入手できるようにすることも要求しています。
自社のホームページ等で環境方針などとともに公開することが一般的な方法と思われます。なお、認証の登録範囲と適用範囲がまったく同じであれば、日本適合性認定協会(JAB)や審査登録機関のホームページ等を提示する形で対応することも可能と思われます。

続く箇条4.4「環境マネジメントシステム」では、環境パフォーマンスの向上を含む意図した成果を達成するために組織にEMSの運用を求めるとともに、その際には4.1及び4.2で得た知識を考慮することも求めています。
まるで念を押すかのように4.1及び4.2を強調する規格。本業と一体化した効果的なEMSを求めている証でもあるのでしょう。

(2016年03月)

PAGE TOP