環境コラム

コラム環境コラム

環境コンサルタント講師の解説による、環境法のポイントをご紹介します。

執筆:環境コンサルタント 安達宏之氏 (洛思社 代表取締役/環境経営部門 チーフディレクター)

安達宏之氏
プロフィール
2002年より現職。主なテーマは「企業向け環境法」「環境経営」。
執筆のほか、企業の法令管理システムやISO14001等の構築、個別調査・コンサルティングなどを行う。
ISO14001主任審査員として、審査業務にも携わる。
各地で企業の環境法担当者向けの環境法セミナー講師を務める。

【第25回】当たり前の「力量確保の仕組み」がない?
~ISO14001:2015年版「7.2力量」を読む

環境コンサルタント 安達 宏之氏
(洛思社 代表取締役/ 環境経営部門チーフディレクター)

ISO14001:2015年版の細分箇条7.2では、社員等への力量・教育訓練に関することを規定しています

7.2「力量」では、まず次の2つの業務を行う者へ必要な力量を決定することを求めています。
組織の環境パフォーマンスに影響を与える業務
順守義務を満たす組織の能力に影響を与える業務


具体的な業務を想像しづらい表現です。規格の附属書A.7.2では、次のようにこれを例示しています。
著しい環境影響の原因となる可能性をもつ作業を行う人
次を行う人を含む、環境マネジメントシステムに関する責任を割り当てられた人
環境影響又は順守義務を決定し、評価する
環境目標の達成に寄与する
緊急事態に対応する
内部監査を実施する
順守評価を実施する


ISO14001:2004年版では、この対象を「特定された著しい環境影響の原因となる可能性を持つ作業」としていましたので、上記の附属書が示す①は変化がないことになり、②が追加されたということになります。
つまり2015年版では、力量を決定すべき対象の範囲がかなり広がったということです。

ただし、2015年版への移行によって対応すべき事項が増えるとは必ずしも言えないと思います。
上記②のうち、例えば環境目標の達成や緊急事態への対応に責任のある者にその関連の力量が無ければ、目標の達成や緊急事態への対応ができないわけです。そうさせないために、どの組織においても基本的には力量のある者に担当させていたはずです。

「そうは言っても、規格の要求事項で追加されたのだから、新たな教育訓練の計画や記録を作らなければいけないのではないか」という疑問もあるかもしれません。
確かに、規格では上の要求事項に続けて、次の3つも定めています。

適切な教育、訓練又は経験に基づいて、それらの人々が力量を備えていることを確実にする
組織の環境側面及び環境マネジメントシステムに関する教育訓練のニーズを決定する
該当する場合には、必ず、必要な力量を身に付けるための処置をとり、とった処置の有効性を評価する

ここで重要なことは、規格に記されている「注記」です。
注記では、適用される処置の例として、「教育訓練の提供、指導の実施、配置転換の実施など」とともに、「力量を備えた人々の雇用」なども掲げています。

つまり対象者への力量確保は絶対だけれども、その方法は必ずしも教育訓練に限らないということですので、新たな教育計画等の策定が必ずしも求められているということではありません。

とはいえ、上記②で掲げられている事項のうち、特に順守義務と環境目標について力量確保の仕組みが不十分な企業も少なくないように思います。
改めて、自社の力量確保の仕組みと状況に問題がないかどうかを確認することをお勧めします。

さらに、本細分箇条では最後に、力量の証拠として、適切な文書化した情報を保持しなければならないことも定めています。
今回追加になった業務を含めて、記録を整備し直すべきです。

(2016年12月)

PAGE TOP