環境コラム

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環境コンサルタント講師の解説による、環境法のポイントをご紹介します。

執筆:環境コンサルタント 安達宏之氏 (洛思社 代表取締役/環境経営部門 チーフディレクター)

安達宏之氏
プロフィール
2002年より現職。主なテーマは「企業向け環境法」「環境経営」。
執筆のほか、企業の法令管理システムやISO14001等の構築、個別調査・コンサルティングなどを行う。
ISO14001主任審査員として、審査業務にも携わる。
各地で企業の環境法担当者向けの環境法セミナー講師を務める。

【第37回】「変更のマネジメント」の重要性に気づく
~ISO14001:2015年版 附属書 A「A.1 一般」を読む

環境コンサルタント 安達 宏之氏
(洛思社 代表取締役/ 環境経営部門チーフディレクター)

最近、ある企業のISO担当者が、外部審査の際に審査員より、「規格の附属書に照らして貴社の活動を見ると、不適合がある」と言われたそうです。

「附属書」とは、ISO14001:2015年版の冊子の後半に、規格本文に続けて掲載されている「附属書A」のことを指します。

この文書のタイトルは「この規格の利用の手引」です。
「A.1 一般」では、「この附属書に記載する説明は、この規格に規定する要求事項の誤った解釈を防ぐことを意図している。この情報は、この規格の要求事項と対応し整合しているが、要求事項に対して追加、削除、又は何らの変更を行うことも意図していない。」と書いています。

つまり、附属書に書かれていることは、規格の要求事項ではないということです。附属書の記載に基づいて、直ちに不適合になることはありません。
仮に冒頭のような発言を本当に審査員が言ったのであれば、「規格本文のどの箇所に照らして不適合なのか説明してください。」と答え、納得のいく説明がなければ、その指摘を受け入れるかどうか慎重に検討することもありうるでしょう。

ただし、だからといって附属書の内容が重要ではないと言いたいわけではありません。
要求事項では無いものの、むしろ、要求事項では無いからこそ、附属書には、規格の意図や、要求事項の背景にある考え方が示されており、環境マネジメントシステム(EMS)を運用する組織にとって、活動の方向性を考える上で示唆に富む記述にあふれているのです。
今回は、附属書が解説している「変更のマネジメント」を紹介しましょう

「A.1 一般」では、変更のマネジメントについて、「組織が継続して環境マネジメントシステムの意図した成果を達成できることを確実にする、環境マネジメントシステムの維持の重要な部分である」と、その重要性を強調しています。

EMS活動に限らず、企業の事業活動は「変更」だらけです。
事業や部門の業務そのものが変わっていくことは、多くの企業にとって普通でしょう。それに伴って事業所の場所、建物、設備などが変わるかもしれません。

あるいは、退職や転勤等々により担当社員が変わることも多いことでしょう。
外部環境の変化もありえます。適用される法令が改正されたり、工場の隣に大きなマンションが建ったりすることによって、行うべきEMS活動が変わりうることもあるでしょう。

附属書では、「変更の例」として、次の事項を挙げています。
・製品、プロセス、運用、設備又は施設への、計画した変更
・スタッフの変更、又は請負者を含む外部提供者の変更
・環境側面、環境影響及び関連する技術に関する新しい情報
・順守義務の変化

このような変更があれば、環境側面も変わり、著しい環境側面も変わるかもしれません。これらの変更を適切にマネジメントする必要があるのです。

附属書が解説しているように、規格本文には、環境側面、内部コミュニケーション、運用管理、内部監査、マネジメントレビューなどで、こうした「変更」を意識付けようとする記述があるので、注意して対応したいものです。

附属書ではさらに、「変更のマネジメントの一環として、組織は、計画した変更及び計画していない変更について、それらの変更による意図しない結果が環境マネジメントシステムの意図した成果に好ましくない影響を与えないことを確実にするために、取り組むことが望ましい。」とも述べています。

例えば、力量を備えていない者が排水処理設備や産廃保管場を管理することはできません。教育訓練など適切な力量確保のための処置が必要となります。
しかし、しばしば、こうした変化が起きても、そこまで思いが至らず、また仕組みも作動せず、何も対応しない状況が散見されます。附属書はこうした事態を憂慮しているのかもしれません。

(2017年12月)

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