環境コラム

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環境コンサルタント講師の解説による、環境法のポイントをご紹介します。

執筆:環境コンサルタント 安達宏之氏 (洛思社 代表取締役/環境経営部門 チーフディレクター)

安達宏之氏
プロフィール
2002年より現職。主なテーマは「企業向け環境法」「環境経営」。
執筆のほか、企業の法令管理システムやISO14001等の構築、個別調査・コンサルティングなどを行う。
ISO14001主任審査員として、審査業務にも携わる。
各地で企業の環境法担当者向けの環境法セミナー講師を務める。

【第38回】ISO用語を普段のビジネス用語に置き換えよう
~ISO14001:2015年版 附属書 A「A.2 構造及び用語の明確化」を読む

環境コンサルタント 安達 宏之氏
(洛思社 代表取締役/ 環境経営部門チーフディレクター)

ISO14001認証取得企業が、2015年版に移行するため、環境マニュアル等の文書を全面的にリニューアルしています。

マニュアルを作らなければならないという要求事項は、2004年版のときからありませんでしたし、今回もありません。しかし、審査対応を含めて、便宜上必要だという自主的な判断をとり、引き続きマニュアルを使用する企業が多いと思います。

それはいいのですが、筆者が気になるのは、今回のマニュアル等の見直しを経ても、なおマニュアル中にISO用語があふれていることです。

例えば、ある企業では、マニュアル中に「トップマネジメントは,次に示す事項によって,環境マネジメントシステムに関するリーダーシップ及びコミットメントを実証しなければならない。」という一文を入れていました。

これは、言うまでもなく、規格の細分箇条5.1の文言をそのまま借用したものです。この一文に続けて、5.1の要求事項を一字一句変えることなく掲載していました。

もちろん、このことが直ちに「悪い」と言うつもりはありません。わざわざ規格の原文をチェックすることが少ない中で、マニュアルに規格の要求事項をあえて書いておいておくほうがよいと考える企業もあるでしょうし、それはそれで一定の合理性はあると思います。

ただし、一方で、この企業では、ISOに対する強いアレルギーがあり、この一文を巡っても、「トップマネジメントとは何?」「リーダーシップやコミットメントを実証するってどういうこと?」などの疑問や疑義が噴出していました。

ISOの用語が普段のビジネス用語とかけ離れており、その分かりづらさに多くの社員の方々が辟易としていたのです。

ISO14001:2015年版「附属書A」の「A.2」では、「構造及び用語の明確化」について次の通り書かれています。

「この規格の箇条の構造及び一部の用語は、他のマネジメントシステム規格との一致性を向上させるために、旧規格から変更している。しかし、この規格では、組織の環境マネジメントシステムの文書にこの規格の箇条の構造又は用語を適用することは要求していない。組織が用いる用語をこの規格で用いている用語に置き換えることも要求していない。組織は、“文書化した情報”ではなく、“記録”、“文書類”又は“プロトコル”を用いるなど、それぞれの事業に適した用語を用いることを選択できる。」

このように、附属書Aでは、「組織が用いる用語をこの規格で用いている用語に置き換えること」を要求していないと断言しているのです。

したがって、(上記の一文をマニュアルに反映させることをその企業が必要だと判断したのであれば)規格の一文をそのまま載せるのではなく、例えば、次のようにシンプルに、普段のビジネスで使用するような用語を使用して書くことができるでしょう。

「社長は、次に示す事項によって、環境マネジメントシステムに関するリーダーシップを発揮しなければならない。」

これで各段にわかりやすくなったかと思います。
しかし、このようなシンプルな表現になった結果、次のことに気づくかもしれません。
「そもそも、こんな当たり前のことをマニュアルに書き込む必要はあるのだろうか?」

そして、不要と判断すれば、それを削除することも選択肢の一つです。
規格の用語を普段のビジネス用語に置き換えながら、文書を簡素化していく。ISOを取り組みやすくするヒントは、こんなところにもありそうです。

(2018年01月)

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