環境コラム

コラム環境コラム

環境コンサルタント講師の解説による、環境法のポイントをご紹介します。

執筆:環境コンサルタント 安達宏之氏 (洛思社 代表取締役/環境経営部門 チーフディレクター)

安達宏之氏
プロフィール
2002年より現職。主なテーマは「企業向け環境法」「環境経営」。
執筆のほか、企業の法令管理システムやISO14001等の構築、個別調査・コンサルティングなどを行う。
ISO14001主任審査員として、審査業務にも携わる。
各地で企業の環境法担当者向けの環境法セミナー講師を務める。

【第40回】なぜ、「組織の状況」なのか?
~ISO14001:2015年版 附属書 A「A.4 組織の状況」を読む

環境コンサルタント 安達 宏之氏
(洛思社 代表取締役/ 環境経営部門チーフディレクター)

規格の細分箇条「4.1 組織及びその状況の理解」では、組織に対して「外部及び内部の課題」を決定することを求めています。

また、続けて「4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解」では、組織の利害関係者のニーズ及び期待のうち、順守義務になるものを決定することを求めています。

規格は、この4.1及び4.2で決定したことを文書化することは求めていません。しかし、多くの企業では「外部及び内部課題一覧」などの文書をつくっているようです。

そうした文書を拝見していると、企業によって決定事項の内容がかなり異なっているように感じます。

例えば、外部の課題として、ある商社では「地球温暖化」という大きな事象を掲げ、一方、ある金属メーカーでは「取引先からの梱包材引取りの要求」というどちらかと言うと細かい課題が掲げられていました。

ISO14001:2015年版「附属書A」(この規格の利用の手引)の「A.4」は「組織の状況」を定め、そのうちの「A.4.1」では、外部及び内部の課題の「例」をいくつか掲げています。そのうちの一つを紹介すると、次のとおりです。

a)気候、大気の質、水質、土地利用、既存の汚染、天然資源の利用可能性及び生物多様性に関連した環境状態で、組織の目的に影響を与える可能性のある、又は環境側面によって影響を受ける可能性のあるもの

この例を読むと、かなり大きな事象を外部及び内部の課題と捉えていることがわかります。

実際に、「A.4.1」では、外部及び内部の課題の意図とは、「組織が自らの環境責任をマネジメントする方法に対して好ましい又は好ましくない影響を与える可能性のある重要な課題についての、高いレベルでの、概念的な理解を提供すること」と述べています。

少なくても、環境側面に掲げられるような詳細な事項を決定することを意図しているわけではありません。「経営課題」と捉えるとわかりやすいと思います。

決定すべきことが「高いレベル」のものであることは、利害関係者のニーズ及び期待も同じです。

「A.4.2」でも、「組織は、関連すると決定した内部及び外部の利害関係者から表明されたニーズ及び期待についての一般的な(すなわち、詳細ではなく、高いレベルで)理解を得ることが期待されている」と述べています。

さらに、ここで注意を要すべきなのは、こうした決定をなぜ行う必要があるのかということです。

「A.4.1」では、「組織の状況の理解は、環境マネジメントシステムを確立し、実施し、維持し、継続的に改善するために用いられる」とも述べています。

つまり、4.1及び4.2いずれも、いわば、よりよき環境マネジメントシステム(EMS)のために活用されるべきと言うことです。

これらの具体的な展開プロセスを考えてみると、より具体的にイメージできるはずです。

4.1及び4.2を決定し、「組織の状況」を理解した上で、そこから「リスク及び機会」を導き出します(6.1.1)。さらに、リスク及び機会は目標設定の際に考慮され、必要に応じてEMS活動に活用されることになります(6.2.1など)。

改訂前の規格では、各部門等において、著しい環境側面や順守義務を決定して、EMS活動を展開していました。改訂後の規格では、それらとともに、4.1及び4.2によって経営課題からもEMS活動が展開できるようにしたのです。

いわば、詳細な事項から活動テーマを決める従来のプロセスに加えて、大所高所から活動テーマを決める新しいプロセスができたと考えればよいでしょう。

もちろん、従来のプロセスであっても、経営課題的な活動テーマを導き出すことはできます。
そのため、すでに経営課題的な活動をEMSとして行っていた組織では、4.1及び4.2が決定されたとしても、新しい活動につながらないこともあるかもしれません。それは、それで問題ありません。

ただし、組織を取り巻く状況は常に変化しているはずです。4.1及び4.2を活用することによって、そうした変化にも注視できると言えるでしょう。

(2018年03月)

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