環境コラム

コラムISO14001改正のポイント

環境コンサルタント講師の解説による、環境法のポイントをご紹介します。

執筆:環境コンサルタント 安達宏之氏 (洛思社 代表取締役/環境経営部門 チーフディレクター)

安達宏之氏
プロフィール
2002年より現職。主なテーマは「企業向け環境法」「環境経営」。
執筆のほか、企業の法令管理システムやISO14001等の構築、個別調査・コンサルティングなどを行う。
ISO14001主任審査員として、審査業務にも携わる。
各地で企業の環境法担当者向けの環境法セミナー講師を務める。

【第42回】著しい環境側面を考慮に入れた環境目標とは?
~ISO14001:2015年版 附属書 A「A.6 計画」を読む

環境コンサルタント 安達 宏之氏
(洛思社 代表取締役/ 環境経営部門チーフディレクター)

規格の細分箇条「6. 計画」は、環境マネジメントシステム(EMS)の活動の実質的なスタート地点を形作る「リスク及び機会」「著しい環境側面」「順守義務」を定めるとともに、それらを目標化する「環境目標」のことなど、広範囲の要求事項を定めています。

ISO14001:2015年版「附属書A」(この規格の利用の手引)の「A.6」でも、それら要求事項に対応した広範囲の解釈を示しています。
今回は、その中でも、次の通り、悩みやすい項目をピックアップして解説していきます。

①ライフサイクルを考慮して環境側面を決定するとは?
規格では、「6.1.2 環境側面」において、「ライフサイクルの視点を考慮し」、環境側面とその環境影響を決定することを求めています。

ここで言う「ライフサイクル」とは、用語の定義の箇所で、「原材料の取得又は天然資源の産出から、最終処分までを含む、連続的でかつ相互に関連する製品(又はサービス)システムの段階群。」とされています(3.3.3)。

なかなか難しい定義です。ちなみに、その「注記」では、「ライフサイクルの段階には、原材料の取得、設計、生産、輸送又は配送(提供)、使用、使用後の処理及び最終処分が含まれる。」とあります。

やや俗っぽい表現を使わせてもらえれば、「揺りかごから墓場まできちんと眺めながら環境側面などを決めてください」と規格は言っているのでしょう。

「A.6.1.2」では、環境側面を決定するときにライフサイクルの視点を考慮することを確認しながらも、次のことを明記しています。

「これは、詳細なライフサイクルアセスメントを要求するものではなく、組織が管理できる又は影響を及ぼすことができるライフサイクルの段階について注意深く考えることで十分である。製品(又はサービス)の典型的なライフサイクルの段階には、原材料の取得、設計、生産、輸送又は配送(提供)、使用、使用後の処理及び最終処分が含まれる。適用できるライフサイクルの段階は、活動、製品又はサービスによって異なる。」

②他のマネジメントシステムで運用するとは?
 規格の「6.1.4 取組みの計画策定」では、著しい環境側面や順守義務、リスク及び機会に関する取組みを行う方法について、EMSプロセスで行うか、又は「他の事業プロセス」へ統合して行うかを計画することを求めています。

「A.6.1.4」では、この点について次のように述べています。

「計画した取組みには、環境目標の確立(6.2 参照)を含めても、又は、この取組みを他の環境マネジメントシステムプロセスに、個別に若しくは組み合わせて組み込んでもよい。これらの取組みは、労働安全衛生、事業継続などの他のマネジメントシステムを通じて、又はリスク、財務若しくは人的資源のマネジメントに関連した他の事業プロセスを通じて行ってもよい。」

 規格が述べている「他の事業プロセス」が社内の広範囲な事業プロセスを指していることは明らかです。
 従来、環境関連の活動であれば無理やり(マニュアル等で絞り込まれた狭い)EMS活動の中に組み込む企業が目立ちましたが、企業の通常業務の中で実施することも一向に構わないことがここで示されているのです。

③著しい環境側面を考慮に入れた環境目標の設定の仕方とは?
 規格の「6.2.1 環境目標」では、著しい環境側面を「考慮に入れ」て環境目標を確立することを求めています。
 では、例えば、100の著しい環境側面を決定した企業では、100の関連する環境目標を掲げなければならないのでしょうか。

「A.6.2」では、次のように述べて、それを否定しています。

「“著しい環境側面を考慮に入れる”という要求事項は、それぞれの著しい環境側面に対して環境目標を確立しなければならないということではないが、環境目標を確立するときに、著しい環境側面の優先順位が高いということを意味している。」

「考慮に入れる」という用語は、規格の世界では、活動上重要視しなければならない重要な意味を持っているものの、実際の運用では柔軟に対応できることを認めていることに留意すべきでしょう。

 規格は、法律ではありません。教条主義的に対応せず、解釈の幅を見極めながら、その範囲内で、自社の実情に応じて対応すべきでしょう。

(2018年05月)

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