環境コラム

コラムISO14001改正のポイント

環境コンサルタント講師の解説による、環境法のポイントをご紹介します。

執筆:環境コンサルタント 安達宏之氏 (洛思社 代表取締役/環境経営部門 チーフディレクター)

安達宏之氏
プロフィール
2002年より現職。主なテーマは「企業向け環境法」「環境経営」。
執筆のほか、企業の法令管理システムやISO14001等の構築、個別調査・コンサルティングなどを行う。
ISO14001主任審査員として、審査業務にも携わる。
各地で企業の環境法担当者向けの環境法セミナー講師を務める。

【第45回・最終回】不断の見直しで、新たなステージへ
~ISO14001:2015年版 附属書 A「A.9 パフォーマンス評価/A.10 改善」を読む

環境コンサルタント 安達 宏之氏
(洛思社 代表取締役/ 環境経営部門チーフディレクター)

規格の細分箇条「9 パフォーマンス評価」と「10 改善」では、環境マネジメントシステム(EMS)活動におけるPDCAサイクルの最後の部分、すなわち、計画(P)通り実施(D)しているかどうかをチェックし(C)、必要に応じて新たな計画を策定して新たなステージへ向かうプロセス(A)を定めています。

ISO14001:2015年版「附属書A」(この規格の利用の手引)の「A.9」と「A.10」では、EMS活動を改善に導くこれらプロセスのポイントを示しています。
このうち、筆者が特に重要と思われる点をいくつかご紹介しましょう。

A.9.1 監視、測定、分析及び評価 A.9.1.1 一般
「環境目標の進捗のほかに、監視し測定することが望ましいものを決定するとき、組織は、著しい環境側面、順守義務及び運用管理を考慮に入れることが望ましい。」


目標に直接つなげていない著しい環境側面の管理がどうなっているか(例:電力使用状況など)、または、環境法規制への日常的な対応状況がどうなっているか(例:廃棄物の保管状況など)等についても検討すべきとしています。

本来のISO14001では、目標に掲げようと掲げまいと、著しい環境側面と順守義務は改善に向けた「2大テーマ」ですので、当然の指摘をしているにすぎません。
しかし、EMS活動を行うとき、どうしても目標の進捗管理に目が奪われがちなので、あえてこのように明記しているのかもしれません。大切な指摘だと思います。

「環境パフォーマンスの分析及び評価の結果は、適切な処置を開始する責任及び権限をもつ人々に報告することが望ましい。」

監視・測定・分析・評価について、上層部への報告プロセスを設けずに、現場管理にとどめている組織が少なくありません。しかし、「適切な処置」を行うには早めに報告するプロセスは不可欠です。少なくても監視・測定等の結果、課題が判明した場合は、早めに報告できるプロセスを整備すべきでしょう。

A.9.1.2 順守評価
「不順守は、例えばそれが環境マネジメントシステムプロセスによって特定され、修正された場合は、必ずしも不適合にはならない。順守に関連する不適合は、その不適合が法的要求事項の実際の不順守には至らない場合であっても、修正する必要がある。」


興味深い指摘です。一般には、法への不順守そのものを「不適合」と捉える組織が多いのですが、上記の記述によれば、システムが機能していれば、必ずしも不適合にはならないことを示しています。

筆者の実感で言っても、適用される環境法には様々なものがあり、かつその規制の中身も様々です。意図せずに、一時的な法逸脱の状況に陥る組織は少なくありません。その中には、不適合というにはあまりに細かな(?)逸脱もあります。

そうした細かな事象にこだわるよりも、その状況を受けてシステムが改善に向けて機能しているかどうかを規格は求めているのだと捉えたいと思います。

A.9.3 マネジメントレビュー
「レビューは、一定の期間にわたって行ってもよく、また、役員会、運営会議のような、定期的に開催される管理層の活動の一部に位置付けることもできる。したがって、レビューだけを個別の活動として分ける必要はない。」


ある企業では、ISO14001が2015年版になり、本業とEMS活動の統合が志向されたことを受けて、単独のマネジメントレビュー(社長と環境管理責任者のみが開催)をやめ、上記のように役員会の一部で実施することにしたそうです。
すると、管理責任者が報告した後に、他の役員から様々な意見が出ることになり、それを踏まえて社長が指示を出すようになり、結果として中身の濃いマネジメントレビューになったそうです。

A.10 改善
A.10.2 不適合及び是正処置
「環境マネジメントシステムの主要な目的の一つは、予防的なツールとして働くことである。」


ISOが2015年版となり、旧版(2004年版)にあった「予防処置」の言葉が消えました。これは、規格が予防処置を軽視したというわけではなく、上記の通り、EMSそのものが予防処置として機能していると捉えたからでしょう。

ISO14001認証を返上した企業を訪問したときのことです。
EMSについて自主的に運用していたはずなのですが、ISO審査という「外部の目」が入らなかったために、実際には仕組みが形骸化し、活動をまともに行っていませんでした。
環境パフォーマンスの状況を見ると、低い目標設定であるにもかかわらず未達が相次ぎ、環境法に逸脱する場面がいくつもありました。

EMSの有効性に疑問を感じる企業担当者が少なくありません。
課題があれば果敢にシステムの改善に取り組むべきですが、EMSを運用していることによって重大な問題を回避できている可能性もあるのです。

そして、EMSが予防ツールとして機能するためには、システムを不断に見直す姿勢が不可欠です。
PDCAが本当に回っているのか。常に考え、行動することが求められているのです。

(2018年08月)

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