環境コラム

コラム環境コラム

環境コンサルタント講師の解説による、環境法のポイントをご紹介します。

執筆:環境コンサルタント 安達宏之氏 (洛思社 代表取締役/環境経営部門 チーフディレクター)

安達宏之氏
プロフィール
2002年より現職。主なテーマは「企業向け環境法」「環境経営」。
執筆のほか、企業の法令管理システムやISO14001等の構築、個別調査・コンサルティングなどを行う。
ISO14001主任審査員として、審査業務にも携わる。
各地で企業の環境法担当者向けの環境法セミナー講師を務める。

【第6回】ますます厳しく法令順守!
~「順守義務」、何が変わるのか?

環境コンサルタント 安達 宏之氏
(洛思社 代表取締役/ 環境経営部門チーフディレクター)

改正ISO14001には「順守義務」という新用語が登場しました。
これは、従来の「法的及びその他の要求事項」を引き継ぐ用語であり、法規制に関するものです。
今回は、法規制に関する事項が改正ISOでどのように変わったのかを見ていきましょう。

改正ISOの国際規格原案(DIS)は、「順守義務(compliance obligation)」を、組織が「順守しなければならない、又は順守することを選んだ要求事項」と定義しています。
その注記では、この義務に「適用される法律及び規制のような強制的な要求事項」から生じる場合があることを記述しているので、従来のISOにおける「法的要求事項」が含まれていることがわかります。

さらに附属書では、ストレートに「“順守義務”は旧規格の“法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項”に代わって用いている」と述べていますので、「法的及びその他の要求事項」と同じ意味で捉えてよいものとなります。

改正ISO全体を見ても、法規制への対応の基本的な仕組みが従来と異なることはないことに気づくでしょう。 つまり、 守るべき法規制を特定し、それを守るための仕組みを作り、そして実施し、チェックして次の活動につなげるという、PDCAサイクルに組み込まれた基本的な環境法対応の仕組みに変更はありません。

ただし、改正ISOでは、順守義務に関する要求事項をいくつか追加しているので、全く変更がないわけでもありません。

例えば、外部コミュニケーション(旧規格の箇条4.4.3)では、順守義務に従った外部コミュニケーションの実施を求めていますし、運用の計画及び管理(旧4.4.6運用管理)では、順守義務からの逸脱を防ぐためのプロセスを管理することを求めています。

中でも、特に私が注目しているのは、「順守評価」(旧4.5.2)の項目に追加された、順守義務への適合状況への知識・理解を維持することを求めたことです。
これは、順守評価を実施する際、その実施者に対して、評価対象が順守義務に適合している状況か否かを判断できるための知識が備わっていることが要求されていると言えます。

「そんなことは当たり前ではないか」
評価者が評価すべき事項への知識があることは当然であり、そのような意見を持つ方も少なくないことでしょう。

しかし、これまでの企業の実態を見てきた者としての感覚で言えば、評価者の力量に疑問符を付けざるをえない順守評価を行う企業は決して少なくなかったかと思います。
さらに言えば、環境法を順守する仕組みを「一応」整備しているものの、その実態は形骸化していた企業も少なくないのではないでしょうか。

法規制からの逸脱は、近年、経営上のリスクとしてますますクローズアップされてきています。
今回追加されたこの要求事項を含めて、改正ISOがさらに法規制順守を強調していることを積極的に捉えて、実効性のある順守義務の仕組みをつくっていくべきでしょう。

[参考文献]
安達宏之「企業の環境法対応の在り方 ~ISO14001改正を契機に考える」『会社法務A to Z』2015年5月号(第一法規)

(2015年05月)

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