第1回 「 所有権を持つ人が排出事業者じゃないの? 」

メジャーヴィーナス・ジャパン株式会社
シニアコンサルタント 堀口 昌澄


「所有権を持つ人(会社)が、産業廃棄物の排出事業者である」といわれることがあります。確かに、所有権を持つ人だけが、そのものを廃棄するかどうかを決めることができます。言い換えると、「自分のモノは捨ててもいい。他人のモノを勝手に捨ててはいけない。」という当たり前のことです。
ところが、事はそう単純ではありません。
では、廃棄物処理法では排出事業者についてどのように説明しているのでしょうか。そして困ったことに、事業者についての明確な定義規定は存在しません。それでも、関係すると思われる条文がありますので、そちらから確認しましょう。

<条文・判例はどうなっているの?>
法第11条  事業者は、その産業廃棄物を自ら処理しなければならない。
実は、廃棄物処理法では「排出事業者」ではなく「事業者」という用語を使っています。「その産業廃棄物を」の「その」は「事業者の」と置き換えてよいでしょう。「の」という助詞は所有を意味するイメージがありますが、実は様々な意味があります。例えば、「リサイクルの会社」という言葉は、「リサイクルに関係する仕事をしている会社」という意味で、この場合は所有の意味はありません。したがって「事業者に関係して排出される産業廃棄物」という意味と読むこともできるでしょう。

次は、産業廃棄物の定義についてです。
法第2条
 4  この法律において「産業廃棄物」とは、次に掲げる廃棄物をいう。
一  事業活動に伴つて生じた廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類その他政令で定める廃棄物

「事業活動に伴って生じた廃棄物」という表現がありますが、これは排出事業者を直接定義づける言葉ではありませんが、産業廃棄物が排出されるプロセスを示しています。ということは、ここでいう「事業活動」の主体となる事業者が排出事業者となるとみるのが自然でしょう。
<裁判所の判例は?>
最後に、平成5年10月28日にあった東京高裁の判決を見てみましょう。これは、工事の元請けと下請けのどちらが排出事業者になるのかということで争ったものです(現在では法改正により元請けが排出事業者になると規定されていますので、訴訟の結果は現在では意味を持ちません。しかし、判決の考え方は今でも参考になります)。上記の法第2条の「事業活動に伴って排出」の考え方について説明してあります。
東京高裁 5.10.28 判決(抜粋)

次に、△療該産業廃棄物がある事業者の事業活動に伴って排出されたものと評価できるかどうかは、結局、当該事業者が当該廃棄物を排出した主体とみること ができるかどうか、換言すれば、その事業者が当該産業廃棄物を排出する仕事を支配、管理しているということ ができるかどうかの問題に帰着するが、少なくとも産業廃棄物を排出する単位として観念される一まとまりの 仕事(何がこの意味の一まとまりの仕事であるかは、社会通念に従って判断される。) の全部を請け負い、それを自ら施工し、したがってその仕事から生ずる廃棄物を自ら排出した事業者は、たとえそれが下請けの形態をとっていたとしても、通常、廃棄物を排出した主体(排出事業者)に当たるということができる。


この判決によると「事業活動に伴って排出」を換言し、「産業廃棄物を排出する仕事を支配、管理している」者が排出事業者になると説明しています。

<まとめ>
ここまでの資料を総合すると、その廃棄物を排出する仕事・業務・事業を主体的に支配、管理している人が、排出事業者である、といえるでしょうか。
所有権を判断基準にしても結果として同じことのように思えますが、ここで製造委託をしているケースを考えてみましょう。製造設備も原材料も資材も発注者から貸与、提供を受け、製品も発注者に全量納品しますが、人材の採用から品質管理に至るまでの現場の管理・運営を一括して受託している会社があるとします。製造に伴って端材や不良品や汚泥が毎日排出される場合、その廃棄物の処理に責任を持つのは、製造受託している会社とするのが合理的でしょう。実際、廃棄物が出てきたら受託者の責任で処理する、という契約を事前に結んでいることが多いはずです。
つまり、先ほど「他人のモノを勝手に捨ててはいけない」と言いましたが、勝手ではなく、「不要となったら捨ててよい」のような合意があれば、所有者でなくても捨てることは可能ということです。

以上、誰が排出事業者になるべきか悩んだ時には、その廃棄物を排出する仕事・業務・事業の主体・管理者が誰かを基準に判断してください。

(2017年10月)

さんぱい塾