第3回「処理業者の違反なんかウチに責任ないでしょ」

メジャーヴィーナス・ジャパン株式会社
シニアコンサルタント 堀口 昌澄


業務を外部の業者に発注した際、発注者がそこで起こった事故や違法行為の責任を負うことは、通常ではありえません。例えば、タクシーに乗って移動中に事故が起こっても、乗客には責任がありません。サスティナビリティ―レポートの印刷を発注して、その印刷会社で長時間労働による自殺者が出たとしても、発注者の責任ではありません。
しかし、乗客が運転席を蹴り上げて運転の邪魔をしたり、印刷会社に無理な納期で発注していた場合はどうでしょうか。発注した側にも相応の責任があるとみられることでしょう。それと同様のことが産業廃棄物の処理を委託する場合にも言えます。例えば爆発性の廃棄物を何の注意もせずに引き渡したり、大量保管していることが分かっているのに、非常識な安値で委託していたりする場合は、発注者たる排出事業者にも道義的責任があると言われるでしょう。

ただし、タクシーの乗客の場合と、産業廃棄物の処理委託をする場合とでは、発注者責任のあり方が大きく違います。産業廃棄物の場合は、発注者が受託者に及ぼす影響が大きいためでしょう、排出事業者の責任が法律に明記されているのです。

◇許可業者への委託
まず、排出事業者は産業廃棄物処理業の許可がある業者に委託しなければなりません。必要な許可を受けた、技術、知識、設備のある業者を選ぶ責任があります。現場の感覚とすると「廃棄物保管庫が一杯になったので持っていって欲しい」というだけのことで、許可があるかどうかは業者側の問題でしかないと思うかもしれません。しかし、もし無許可の業者に処理委託した場合は、5年以下の懲役または1千万円以下の罰金の対象となります。さらにそこで不法投棄等が起こった場合は行政処分を受ける可能性があります。ここでいう行政処分とは、環境汚染などの問題が起こらないようにする命令(措置命令)で、通常はその排出事業者の会社名が公表されることになります。 なお、処分業の許可は、処理施設がある場所を管轄する都道府県又は政令で規定する市、収集運搬の許可は廃棄物を積み込む場所と、降ろす場所の都道府県の許可が必要となります。

◇契約書の作成
産業廃棄物を実際に引き渡す前には、処理委託する産業廃棄物の中身や、委託業務の内容を明記した契約書を作成しなければなりません。契約書の記載内容は法律で決められており、記載事項に漏れがあると契約書作成義務違反となります。また、契約に関係する許可証のコピーを添付し、契約書は契約終了から5年以上保管しなければなりません。一般に「仕事を発注するのだから、必要な書類はプロである業者が準備するのが当然」という感覚があります。しかし、契約書の作成義務は排出事業者だけに課せられています。それだけ、排出事業者には処理委託にあたっての責任があるということでしょう。
排出事業者によっては廃棄物を持って行ってもらうことしか考えておらず、どこで処分するかは収集運搬業者にお任せしていることがあります。このような場合、運搬〜最終処分までのすべての費用を収集運搬業者に一括して払っていることも多いでしょう。しかし、そのようなことをすると、収集運搬業者は、処分費用が安い、いい加減な処分業者に持ち込んで、できるだけ多く手元に現金を残そうとします。本気で処分費用を節約したいのであれば、山奥でダンプアップしてさっさと次の仕事に取り掛かるのが合理的な手段、ということになりかねません。これを防ぐために、排出事業者は運搬については運搬業者と、処分については処分業者とそれぞれ契約することを義務付けているのです。 これらの契約書関係の義務に違反した場合は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金の対象となりますし、前述の通り処理業者が不法投棄した際に行政処分を受ける可能性があります。

◇マニフェストの運用
契約は引き渡しの前に締結するものですが、引き渡しの都度交付する管理伝票があります。法律上は「産業廃棄物管理票」と言いますが、一般に「マニフェスト」と呼んでいます。排出事業者がマニフェストを収集運搬業者に交付し、廃棄物と一緒に運ばれていきます。そして運搬、中間処理、最終処分の終了時に、複写式の伝票が切り離されて排出事業者に戻ってきます。最近では、電子化が進んでいるため、紙の代わりに電子データの形式で交付〜各報告が行われることもあります。
マニフェストは法定事項を記載すること、引き渡しの際に交付すること、各伝票を5年以上保存することが法律で義務化されています。これに違反すると1年以下の懲役、100万円以下の罰金の対象になります(2018年4月1日以降、それ以前は6か月以下の懲役、50万円以下の罰金の対象)。また、一定期間を超えても処理業者からマニフェストの返送がない、記載内容がおかしいなどの場合には、排出事業者は処理状況の確認を行い、必要な措置を講じて、都道府県知事に報告書を提出しなければなりません。例えば、中間処理終了のマニフェストが返送されてこない場合、収集運搬業者が中間処理業者に持ち込まずに山奥でダンプアップしているかもしれませんので、確認をしたほうが良い、ということになります。
これらのマニフェストに関する義務を果たしてない場合に、処理業者が不法投棄をすると、前述同様に行政処分を受ける可能性があります。

◇処理困難通知制度
処理業者に事業停止命令のような行政処分が出されるなどして、産業廃棄物の受け入れができなくなった場合、処理業者は排出事業者に「処理困難通知」を出す義務が生じます。処理困難通知を受け取った排出事業者は、処理の状況を確認し、必要があれば廃棄物の撤去などの措置を講じなければなりません。上記のように、契約書やマニフェストの管理を適切にしていたとしても、これを免れることはできません。

このように、処理業者が問題を起こした場合には、排出事業者が何らかの形でその責任を取らなければならない仕組みになっています。排出事業者は、第一義的には自社の廃棄物を自らの責任で処理することが求められています(※)ので、処理委託したとしても自らの責任を放棄することはできないのです。

※事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない。(廃棄物処理法第3条)

(2017年12月)

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