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有害大気汚染物質対策とは?マンガンの指針値を設定!

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環境コンサルタント
安達宏之 氏

4月30日、中央環境審議会から環境大臣へ「今後の有害大気汚染物質対策のあり方について(第十次答申)」が答申されました。
この答申では、有害大気汚染物質の健康リスク評価について具体的な手順を示すとともに、マンガン及びその化合物について「指針値」を提示しており、注目を集めました。

御存じのように、大気汚染防止法では、ばい煙や揮発性有機化合物(VOC)、粉じん等による公害を防止するために、ばい煙排出基準等を定めて、ばい煙発生施設等に基準順守を求めています。
今回登場した有害汚染物質対策も、本法で定める仕組みの一つですが、こうしたばい煙規制とは異なりますので、気をつけたいものです。

有害大気汚染物質対策は、本法18条の20~18条の24にて規定されています。
「低濃度であっても長期的な摂取により健康影響が生ずるおそれのある物質」である有害大気汚染物質について、将来の健康被害を未然に防止することを求めています。
具体的には、国に対して、科学的知見の充実に努めるとともに、健康リスク評価の公表を義務付けています。一方、事業者に対しては、排出状況の把握と排出抑制等を「責務」として求めるにとどめています。

こうした有害大気汚染物質に該当する可能性のある物質として、現在国は248種類をリストアップし、そのうち優先的に対策に取り組む物質として、トルエンなどの23種類を掲げています。
この23種類の中には、行政上の目標値となる環境基準を定めたものが4種類、未然防止の観点から排出抑制基準を定めたものが3種類、それぞれあります(ベンゼンなど)。

さらに、「環境目標値の一つとして、環境中の有害大気汚染物質による健康リスクの低減を図るための指針となる数値」である「指針値」を定めた物質として、今回の答申までに塩化ビニルモノマーなど8種類を定めていました。
今回のマンガン及びその化合物の追加によって、これが計9種類となりました。
ちなみに、マンガン及びその化合物の指針値は、年平均値0.14 μg Mn/m3 以下です。

今回のマンガン及びその化合物を含めて、指針値の制度は、ばい煙規制のような規制措置とは異なります。違反した場合の命令や罰則の規定もありません。しかし、だからと言って、設定された指針値を考慮せずに対象物質を取り扱うことは社会的に認められないでしょう。
事業者は指針値を念頭に置きながら、大気汚染防止法の責務規定にあるような排出状況の把握を着実に行うとともに、その排出抑制が求められると言えるでしょう。

▶︎ 「今後の有害大気汚染物質対策のあり方について(第十次答申)」(環境省)
http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=18103

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