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PM2.5で国内規制も強化へ?~ばいじんやVOC規制強化を検討中

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環境コンサルタント
安達宏之 氏

PM2.5(微小粒子状物質)と聞けば、「中国などから飛来してくる細かなチリで、健康に有害なもの」と捉えている方が多いことでしょう。

PM2.5による国内の大気汚染に、大陸からの越境汚染が影響していることは確かです。しかし、それのみで起きているわけではないことにも留意しなければなりません。

平成27年2月、中央環境審議会の専門委員会が、「微小粒子状物質の国内における排出抑制策の在り方について(中間とりまとめ)(案)」(以下「中間とりまとめ」と略)をとりまとめました。

それによれば、年平均濃度への越境汚染の寄与割合は、西日本で大きく、九州地方では約7割と推計されていますが、関東地方では約4割にとどまっています。
つまり、国内発生源の寄与の割合は、東に行くほど大きいという意味です。実際、関東地方における国内発生源の寄与の割合は、実に約5割も占めているそうです。

こうなると越境汚染対策を求めるだけでは不十分となります。そこで、「中間とりまとめ」では、近隣諸国等と連携した越境汚染対策を推進するとともに、国内対策の充実も求めています。
発生源ごとに、課題を短期と中長期に分類して列挙し、国内対策の在り方を提言しています。

提言の中で、私自身が特に注目している対策は、次の2つです。

(1)ばいじん・NOx対策
ばいじん・NOx(窒素酸化物)対策について、「経済的及び技術的考慮を払いつつ、追加的な排出抑制策の可能性を検討すべき」と提言しています。
例えば、ばいじんの場合であれば、平成10年に廃棄物焼却炉への規制強化が行われて以来、新たな規制強化は行われていませんでした。提言が実現すれば久しぶりの規制強化となります。

追加対策が規制基準強化なのか、対象施設の拡大なのか明らかにされていませんが、何らかの規制強化が行われると考えておいたほうがいいでしょう。

(2)VOC対策 「中間とりまとめ」は、PM2.5の発生源の一つとなっているVOC(揮発性有機化合物)対策も求めています。

具体的には、ガソリンスタンドのような燃料小売業からのVOC 排出をターゲットにしています。
車両への給油時における燃料蒸発ガス対策を提示し、「経済的及び技術的考慮を払いつつ、適切な対策の導入を早急に検討すべき」としています。

欧米では、給油時の燃料蒸発ガスを排出させない対策がすでに導入されており、日本でもそうした対策が求められるようになるのかもしれません。

さらに、タンクローリから地下タンクへの燃料受入時における燃料蒸発ガス対策についても、「全国的に速やかに推進していくべき」と提示しました。

こうした対策がまだ具体化されたわけではありませんが、遠からずPM2.5に関わる国内の規制強化が行われるようなので、注意して見続けたいものです。

(2015年6月)

▶︎ 「微小粒子状物質の国内における排出抑制策の在り方について(中間とりまとめ)(案)」に関する意見募集(パブリックコメント)について(環境省)
http://www.env.go.jp/press/100303.html

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