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工場立地法の準則が改正~進む規制緩和

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環境コンサルタント
安達宏之 氏

製造業などの企業が一定規模以上の工場を新設等する場合、工場立地法に基づいて届出を行わなければなりません。その上で、「工場立地に関する準則」(以下、準則と略)に定める生産施設、緑地、環境施設の割合を順守する義務があり、これに適合しない場合は、勧告や命令、罰則が適用されます。

近年、この工場立地法に関連した改正がいくつか行われています。

平成24年には、本法施行令・施行規則とともに準則が改正されました。改正では、まず、太陽光発電施設を届出対象から除外しました。本法の対象業種には、電気事業者が含まれていますが、水力発電、地熱発電と同様に、太陽光発電施設についても除外したのです。

また、本法の対象工場において売電用の太陽光発電施設を設置する場合、それを環境施設として位置づけるための改正も行われました。従来は、自家発電用の太陽光発電施設のみを環境施設として位置づけていたものを拡大したのです。

どちらの改正も、太陽光発電を促進するための規制緩和と言えるでしょう。

平成27年5月25日、準則が再び改正されました(同日施行)。 準則別表1を改正し、次の業種の生産施設面積率の上限を65%に引き上げたのです。

生産施設面積率の上限が引き上げられた業種

1製材業、木製品製造業(一般製材業を除く)
2造作材・合板・建築用組立材料製造業(繊維板製造業を除く)
3非鉄金属鋳物製造業
4一般製材業
5農業用機械製造業(農業用器具製造業を除く)
6繊維機械製造業
7建設機械・鉱山機械製造業
8冷凍機・温湿調整装置製造業
9潤滑油・グリース製造業(石油精製業によらないもの)

このうち、例えば製材業であれば、従来の生産施設面積率は35%でした。これが一気に65%となったので、単純に計算すれば、実に現状よりも30%多く敷地内に生産施設を拡張することができることになり、大幅な規制緩和となりました。

こうした改正の背景には、複数の業界団体より生産施設面積率の規制緩和の要望が国に出されていたことがありました。
これを受けて経済産業省は、工場立地法検討小委員会において検討を開始。規制緩和の要望があった業種における環境負荷物質の排出状況を検証し、従来からすでに65%の生産施設面積率の適用対象となっていた業種と比較して、問題がないと判断した業種を一律65%まで引き上げたのでした。

工場立地法は、元々、高度経済成長の中で新たに次々と工場が立地されてきた譲許を踏まえて、環境保全を確保しながら工場立地が適正に行われるために制定されたものでした。その後、海外への移転を含めた工場立地動向の変化、環境規制や環境技術の進展などがあり、規制のされ方にも変化が出てきたと言えるのでしょう。

本法の対象工場では、こうした規制緩和の動向を見据えた工場経営が求められています。

一方、現状の工場立地法に基づく規制を順守せず、かなりの期間に渡って緑地面積率などを確保できていない事業者も散見されます。
また、本法が適用されていることを忘れて、届出も行わずに緑地面積を縮小させ、勝手に生産施設を設置するような例も見聞きします。
規制緩和されているからと言っても、こうした振る舞いは、当然ながら行政指導や勧告・命令・罰則適用の対象となりえますので、十分気をつけたいものです。

(2015年9月)

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