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18年ぶりの合意、温暖化対策は新ステージへ! ~「パリ協定」のポイントと国内規制への影響

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環境コンサルタント
安達宏之 氏

2015年11月から12月にかけて、地球温暖化対策の国際会議であるCOP21(国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議)等がパリで開催されました。

世界各国の首脳を含む190カ国以上の関係者が集結し、2020年以降の法的な枠組みについて連日連夜交渉が重ねられた結果、12月12日、ついに「パリ協定」が採択されるに至りました。これは、1997年の京都議定書の採択以来、実に18年ぶりの法的枠組みの合意ということになります。

パリ協定の主な内容は、政府発表によれば、次のとおりです。

①世界共通の長期目標として2度目標のみならず1.5度への言及
②主要排出国を含むすべての国が削減目標を5年ごとに提出・更新すること、共通かつ柔軟な方法でその実施状況を報告し、レビューを受けること
③JCM を含む市場メカニズムの活用が位置づけられたこと
④森林等の吸収源の保全・強化の重要性、途上国の森林減少・劣化からの排出を抑制する仕組み
⑤適応の長期目標の設定及び各国の適応計画プロセスと行動の実施
⑥先進国が引き続資金を提供 すること並んで途上も自主的にすること
⑦イノベーションの重要性が位置づけられたこと
⑧5年ごとに世界全体の状況を把握する仕組み
⑨協定の発効要件に国数及び排出量を用いるとしたこと
⑩「仙台防災枠組 」への言及 (COP決定)

パリ協定の最大のポイントは、上記のうち①と②です。すなわち、温暖化対策に向けた世界共通の目標を設定するとともに、主要排出国を含むすべての国が削減目標を5年ごとに提出し、その実施状況のレビューを受けることにしたことです。

世界共通の目標について、協定では、「地球の平均気温上昇を産業革命前の水準に比べて2度よりはるかに低い水準に抑え、1.5度に抑制する努力をする」と定めています(気候ネットワーク仮訳。文末掲載の資料参照)。
これは、今世紀後半には、実質的に排出量を「ゼロ」にすることに他なりません。

現在、すでに世界の平均気温は上昇中であり、この2度又は1.5度の目標値の達成は、決して楽なものではありません。
また、各国がすでに自主的に提出している国別の削減目標値を積み上げたとしても、この世界全体の目標を達成できないことが明らかとなっています。
つまり、この国際合意を果たしていくためには、各国がさらに対策を強化することが求められることになります。

すでに国内においては、省エネ法の運用強化や建築物省エネ法の施行などが控えていますが、今後ますます温暖化対策が強化されることは必至です。
かつての京都議定書の頃の動きがそうであったように、都道府県などの自治体も温暖化対策条例の制定・改正などにより規制を強化することになると思われます。

企業にとって規制がスタートしてからの対策は、環境・CSR上のイメージダウンとともに、コストもかさみがちとなります。
国際動向を見極めながら、早めかつ積極的な温暖化対策が期待されます。

(2016年01月)

▶︎ 国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)及び京都議定書第11回締約国会合(COP/MOP11)の結果について(環境省)
http://www.env.go.jp/earth/cop/cop21/index.html

▶︎ パリ会議(COP21/CMP11)の結果と評価(2015/12/25)(気候ネットワーク)
http://www.kikonet.org/info/press-release/2015-12-25/cop21-evaluation

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