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「省エネ停滞事業者」の烙印回避を~省エネ法、来年度から運用強化へ

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環境コンサルタント
安達宏之 氏

前回、昨年の平成27年12月のパリ協定を受けて、今後、国内の温暖化対策はさらに強化されるだろうと書きましたが、すでに強化の動きがあります。28年4月からスタートする省エネ法の運用強化のことです。

昨年12月、経済産業省資源エネルギー庁の審議会で、28年4月から省エネ法の運用を強化することに関する具体的な方針が示されました。

省エネ法では、エネルギー使用量が原油換算1500kl以上の事業者に対して、省エネに向けた中長期計画を提出させ、毎年定期報告を義務付けています。
こうした規制対象の事業者に対して、国が「事業者クラス分け評価」を行うことになりました。

この仕組みとは、省エネ法の定期報告を提出するすべての事業者を「S・A・B・C」の4段階へクラス分けするというものです。各クラスの詳細は、次のとおりです。

クラス対象水準
S 省エネが
優良な事業者
①努力目標達成(5年間平均原単位を年1%以上低減)
または
②ベンチマーク目標(ベンチマーク制度の対象業種・分野において、事業者が中長期的に目指すべき水準)達成
A 一般的な事業者 SクラスにもBクラスにも該当しない事業者
B 省エネが
停滞している事業者
①努力目標未達成かつ直近2年連続で原単位が対前度年比増加
または
②5年間平均原単位が5%超増加
C 注意を要する事業者 Bクラスの事業者の中で特に判断基準遵守状況が不十分

現在、省エネ法の定期報告等が義務付けられている対象事業者は、1万2338社になりますが(26年度)、これをクラス分けすると、Sクラス6734社(約55%)、Aクラス4240社(約34%)、Bクラス1364社(約11%)となります(Cクラスの事業者数は出ていませんが、以前に50社程度で0.5%程度だとされていました)。

Sクラスの企業には、優良事業者として、経産省のホームページで企業名などが公表されます。
一方、Bクラスとなると、注意文書が送付され、省エネが停滞しているという自覚を促します。さらに現地調査や立入検査等を重点的に実施し、改善を求めていきます。Cクラスの場合は、さらに一歩踏み込み、省エネ法6条に基づく厳しい指導を行うそうです。

Bクラスの措置の一つである注意文書の送付は、企業の代表者宛に送付するとのことです。
代表者に対して国から、「貴社は省エネ停滞事業者である」という趣旨の文書が送付される。かなりのインパクトになることは間違いないでしょう。

この制度は、28年4月にスタートします。同年5月にはSクラスの事業者が公表されます。
Bクラス(Cクラスを含む)の事業者に対しても、5月より、注意文書が送付されます。6月から、現地調査の案内送付が始まり、報告徴収が順次実施されます。その調査結果を踏まえて、12月から立入検査が順次実施されます。さらに、立入検査の結果を踏まえて、29年3月にCクラスの事業者に対して指導を行う予定です。

実は、上記の報告徴収や立入検査の規定は、従来から省エネ法の条文にあったものでしたが、運用面で課題がありました。
今回はそれを改め、これら規定も積極的に活用しながら、省エネ停滞事業者への指導を強化することにしたわけです。今まで以上に省エネの取組みが求められます。

(2016年02月)

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