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27物質が化学物質リスクアセスメントに追加へ ~終わらない化学物質対応

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環境コンサルタント
安達宏之 氏

本連載の第31回目の記事では、平成28年6月に施行される改正労働安全衛生法の化学物質リスクアセスメントの義務化を取り上げました。
そこでは、安全データシート(SDS)交付の対象物質となる640の化学物質を取り扱う事業者に対して、一定の機会にリスクアセスメントの実施が求められたことを解説しました。

すでにこの対策に乗り出している企業も少なくありませんが、その後、さらに労働安全衛生法施行令が改正され(平成28年2月24日政令318号)、対象物質が追加されました(29年3月施行)。しかし、このことを見逃している企業が散見されますので注意が必要です。

一定の有害性が明らかになったとして、追加された対象物質は、次のとおりです。

亜硝酸イソブチル N―ビニル―2―ピロリドン
アセチルアセトン ブテン
アルミニウム プロピオンアルデヒド
エチレン プロペン
エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート 1―ブロモプロパン
クロロ酢酸 3―ブロモ―1―プロペン(別名臭化アリル)
O―3―クロロ―4―メチル―2―オキソ―2H―クロメン―7―イル=O′O′′―ジエチル=ホスホロチオアート ヘキサフルオロアルミン酸三ナトリウム
三弗化アルミニウム ヘキサフルオロプロペン
N,N―ジエチルヒドロキシルアミン ペルフルオロオクタン酸
ジエチレングリコールモノブチルエーテル メチルナフタレン
ジクロロ酢酸 2―メチル―5―ニトロアニリン
ジメチル=2,2,2―トリクロロ―1―ヒドロキシエチルホスホナート(別名DEP) N―メチル―2―ピロリドン
水素化ビス(2―メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム 沃化物
テトラヒドロメチル無水フタル酸

これら27 物質とこれらを含有する製剤その他の物が規制対象となります。
このうち、アルミニウムについては、粉状のものに限って化学物質等の名称等の表示義務の対象とされました。

これらへの義務内容は、次の3つとなります。
(1)SDSの交付
(2)ラベル表示
(3)リスクアセスメント

第31回目の記事でもお伝えしたように、改正法では、化学物質等を原材料等として新規に採用し又は変更するときなど、一定の機会を捉えてリスクアセスメントを行うことを義務付けています。
しかし、既に取り扱っていた物質が規制対象として追加された場合など、過去にリスクアセスメント等を実施したことがない場合には、できる限りリスクアセスメントを行うことを求めているものの、法的義務とはなっていません。

とはいえ、「リスク」が存する以上、従来から使用している化学物質についてもリスクアセスメントを実施する企業が少なくありません。
今回の追加物質についても、その取扱い状況などを調べ、リスクアセスメントを含む管理の徹底を検討すべきでしょう。

また、リスクアセスメントによって見積もったリスクを踏まえて、その低減措置を検討することになります。
「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針」(平成27年9月18日)では、最優先に検討されるべき措置として、「危険性又は有害性のより低い物質への代替、化学反応のプロセス等の運転条件の変更、取り扱う化学物質等の形状の変更等又はこれらの併用によるリスクの低減」が掲げられています。

これは、実際の製造プロセス等の変更を招く措置といえ、簡単に対応できるものではありません。その意味でも、やはり早め早めの対応が求められています。

(2016年04月)

▶︎ 労働安全衛生法施行令の改正について(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000109948.html

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