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改正PCB特措法が8月に施行~事業所のPCB対策で注意すべきポイントは?

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環境コンサルタント
安達宏之 氏

2016年8月からPCB対策が大幅に強化されます。

現在、事業所にPCB廃棄物を保管している企業はもちろん、それ以外の企業も注意すべき箇所がいくつかありますので、確認しておきましょう。

PCBとは、「ポリ塩化ビフェニル」という毒性の高い化学物質であり、昭和47 年以降は製造されていません。しかし、既に製造されたPCBが含まれる高圧コンデンサなどが全国の事業所にあり、その処理が大きな課題となったため、平成13年には「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」(PCB特措法)が制定されました。

PCB廃棄物は、特別管理産業廃棄物として特別管理産業廃棄物管理責任者を選任するなど、廃棄物処理法の規制を受けます。同時に、PCB特措法の適用も受け、毎年、保管・処分状況を届け出るとともに、譲り渡し等の制限、期限内処分などが義務付けられ、厳重な管理下に置かれています。

今年5月に成立した改正PCB特措法における改正点は主に次の通りです。

①高濃度PCB廃棄物の保管事業者に対して、「計画的処理完了期限」より前の処分を義務付ける
②使用中の高濃度PCB使用製品の所有事業者に対して、「計画的処理完了期限」より前に廃棄することを義務付ける
③未届けの高濃度PCB廃棄物等を把握できるように、都道府県等の報告徴収や立入検査の権限を強化する
④高濃度PCB廃棄物の保管事業者が不明な場合など、都道府県等が処分の代執行を行えるようにする

こうした改正の背景には、現在の状況のままでは、約束した期限までにPCB廃棄物の処分が終わらないという国の危機意識があります。 PCB特措法では、平成39年3月末日までにすべてのPCB廃棄物を処分することになっています。
さらに高濃度PCB廃棄物については、31年3月末日~36年3月末日までに処分することを処理施設のある地域と約束しています(地域によって期限は異なる)。この地域との約束の期日を「計画的処理完了期限」と言います。

ところが、改正前の本法では、PCB使用製品の使用をいつ廃止し、いつ廃棄物として排出するかは、使用者の任意に委ねられていました。これでは、使用中製品の期限までの処分が担保されていないことになります。

そこで、②の規定を設け、高濃度のPCB 使用製品について、処理期限に間に合うよう期限を設けてその使用廃止を義務付けることにしたのです。
また①の規定も設け、PCB廃棄物の保管事業者にも同様の義務を課しました。

なお、電気工作物に該当する高濃度PCB 使用製品については、電気事業法の電気設備技術基準(省令)の見直しなどにより、処理期限内の使用廃止を義務付けることになっています。

さらに、PCBの使用製品や廃棄物の状況を調査すると、PCBを含有した、電気工作物ではない使用中の安定器が少なからず見つかりました。これはPCB特措法にも電気事業法にも関係ないために無届け出状態となっていたのです。
そこで、上記③・④の規定を設けて、都道府県等による調査・対策を強化することにしたのです。

以上のような改正が今回行われ、8月1日に施行されることになります。 事業者の注意点をまとめると、次のようになります。

◆PCB廃棄物の保管事業者は、今一度、処理期限を確認し、対策スケジュールを組む
◆事業所内に、PCB使用製品がないかどうか今一度確認する。それが電気工作物に該当する場合は、電気事業法に基づき速やかに届出を行う。それ以外に該当する場合は、改正PCB特措法に基づく届け出の有無を含めて、行政に相談する。

今後、行政から対策のポイントについて様々な案内が出ることでしょう。 アンテナをきちんと張って、対策に取り組んでください。

(2016年07月)

▶︎ 改正PCB特措法(環境省)
http://www.env.go.jp/press/102108.html

▶︎ 同法の政令案等(環境省)
http://www.env.go.jp/press/102623.html

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