平成28年8月19日、悪臭防止法の関連告示が改正され、同日に施行されました。
対象となる告示の名称は、「臭気指数及び臭気排出強度の算定の方法」(平成7年9月環境庁告示第63 号)です。
悪臭防止法には、特定悪臭物質規制と臭気規制の2種類の基準があります。都道府県知事や市長は、このうちどちらかの基準を選ぶことができます。
特定悪臭物質規制が、アンモニアなどの22物質の規制基準の順守を求めるものである一方、臭気規制とは、対象物質を定めず、人間の嗅覚によってにおいの程度を数値化して規制基準を設けているものです。
近年、特定悪臭物質規制から臭気規制に切り替える都道府県等が増加しているので、企業は、その動向を見逃さないように注意しなければなりません。
今回この告示が、臭気の測定精度を向上させるために改正されました。
具体的には、まず、臭気測定の際に行われるパネルの選定試験の方法を見直しました。
5枚のにおい紙に無臭の流動パラフィンや基準臭液を浸す順番を特定しないルールにするとともに、5種類の基準臭液のうち1種類のみ間違えた場合は、間違えた基準臭液について2度再検査を行い2度とも正しく回答した者を合格としました。従来よりも厳密な内容の試験方法としたのです。
また、装置や器具のルールを見直し、におい袋の試料導入口について、従来のガラス管だけでなく、無臭性のもので臭気の吸着及び透過が少なく、におい袋のフィルムと同じ定性的な条件を満たす材質のものも使用可能としました。
さらに、排出口試料・排出水試料へのにおい袋選定操作でいずれかの付臭におい袋を必ず回答することに改めるなど、測定方法のルールも見直しました。 以上の他に、「正常な嗅覚」という告示中の文言を「判定試験に適した嗅覚」に改めました。
今回の改正によって、臭気規制の制度がより高まることになりましたが、臭気規制の適用を受ける事業場への規制内容が大きく変化するわけではありません。
とはいえ、臭気測定の精度を向上させる今回の改正の背景には、特定悪臭物質規制から臭気規制に舵が切られ、その正確さへのニーズが従来以上に高まっているからと言えるでしょう。
臭気を発する事業所は少なくありません。一方、臭気とは慣れるものであり、事業所内にいてはその臭気に気づかず、近隣住民による自治体への通報によって初めて気づく事業者がいることもよく聞く話です。
企業によっては、この慣れによる対策遅延を防止するために、他地域の事業所で臭気を発していないところ(本社オフィスなど)の社員を定期的に臭気を発する可能性のある事業所に巡回させている例もあります。
悪臭、騒音、振動は「生活公害」と呼ばれますが、住民とのトラブルになりやすい環境問題です。
今回の告示改正をきっかけに、改めて自社の臭気対策に目を配りたいものです。
(2016年10月)
▶︎ ◎「臭気指数及び臭気排出強度の算定の方法」の一部を改正する告示の公布について(環境省)
⇒http://www.env.go.jp/press/102887.html