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電子マニフェスト義務化と不適正処理対応強化~改正廃棄物処理法案、広がる規制の網

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環境コンサルタント
安達宏之 氏

平成29年3月10日に閣議決定された廃棄物処理法の改正法案。現在、通常国会に提出されています。
 福島第一原子力発電所事故対応を除けば、大きな改正としては平成22年以来の改正法案となります。そのポイントは、次の3点とされています。

廃棄物の不適正処理への対応の強化
有害使用済機器の適正な保管等の義務付け
親子会社間での産業廃棄物処理の特例

まず①は、28年1月に大きな社会問題となった、産廃処理業者による食品廃棄物不正転売事件などを踏まえた対策です。

対策の中で最も注目されるのは、特定の産業廃棄物を多量に排出する事業者に対して、紙マニフェストの交付に代えて、電子マニフェストの使用を義務付けたことです。さらに、マニフェストの虚偽記載等に関する罰則も強化しました。

対象となる「多量」な「特定の産業廃棄物」が何を指すのかが気になるところです。一定量以上の特別管理産業廃棄物になると見られていますが、改正法案が成立後に公布される環境省令において定められるで、その動向に注意すべきでしょう。

また、廃棄物処理業の許可を取り消された者等が廃棄物の処理を終了していない場合、排出事業者に対する通知を義務付けました。さらに、都道府県知事などが必要な措置を講ずることも命ずることができるようにしました。

 次に、②は、いわゆる雑品スクラップ規制のことです。

廃棄物ではないものの、鉛等の有害物質を含む電気電子機器等のスクラップの環境保全措置が十分に行われていないことが課題となっていました。
 そこで、これらの物品の保管又は処分を業として行う者に対して、都道府県知事へ届け出るとともに、処理基準の順守などを義務付けたのです。

雑品スクラップでは不適正輸出も問題となっており、これについては廃棄物処理法改正法案と同日に閣議決定されたバーゼル法改正法案で対応します。
 廃棄物処理法とバーゼル法の2つの法改正によって、その対策を本格化させようと言うことでしょう。

③は、規制強化ではなく、経済団体からの要望を踏まえた規制緩和の措置です。

親子会社が一体的な経営を行うものであるなど、一定の要件に合致している場合、都道府県知事の認定を受けた親子会社は、廃棄物処理業の許可を受けずに、相互に親子会社間で産業廃棄物の処理を行うことができるようになります。

 改正法案の施行日は、電子マニフェスト関連の規制を除き、公布日から1年以内の政令で定める日です。 電子マニフェスト関連の規制は、3年以内の政令で定める日です。

今回の改正法案の全体像は以上の通りですが、この改正法案の内容を含む現在の廃棄物処理法の課題や見直しの方向性を知りたい方には、2月14日に中央環境審議会より出された「意見具申」を一読されることをお勧めします。

意見具申では、改正法案に関わる規制への詳細な考え方とともに、改正法案では触れられていない事項として、「排出事業者責任の徹底」や「優良な循環産業の更なる育成」など、本法の様々な見直しの方向性も示されています。 本法に対応する企業の在り方を考える一助になると思います。

(2017年04月)

▶︎ ◎廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部を改正する法律案の閣議決定について(環境省)
 ⇒http://www.env.go.jp/press/103794.html

▶︎ ◎廃棄物処理制度の見直しの方向性(意見具申)(環境省)
 ⇒http://www.env.go.jp/council/toshin/t03-h2802.pdf

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