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水銀使用製品廃棄物、10月1日規制開始!~準備不足のまま違反続出!? 環境省Q&Aから読み解く

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環境コンサルタント
安達宏之 氏

平成29年10月1日。ついに水銀廃棄物の新規制が本格スタートしました。

急ごしらえで本社環境部門が各事業所に規制内容の通知を出し、それに対して事業所からの疑問が噴出するなど、対応方法を確定し切れていない企業が少なくないようです。
 そもそも、この規制を知らない企業も多いことでしょう。

この連載では、過去2回、水銀廃棄物の解説をしてきました。
【第51回】水銀廃棄物ガイドラインが公表!
【第50回】改正廃棄物処理法施行規則がついに公布!

今回、施行間際になって環境省が改正説明会などでの質疑応答をまとめた「廃棄物処理法施行令等の改正に関するQ&A」(平成29年9月)を公表しました。
 全く新たな解釈を示した箇所はないようですが、企業が対応方法を検討するうえで参考になる記述がいくつか見られます。
 それを紹介しながら、企業が気をつけるべきポイントを解説します。なお、Qはかなり簡略化しているので、気になる箇所があれば、原文を確認してください(末尾にURL記載)。

【Q】処理業者が取り扱えるかどうかをどのように確認するのか?(Q1-3)
 回答では、法令上は「口頭の確認でも事足りる」としつつ、委託時の適正処理に必要な措置を講じるべきという努力義務を参照しながら、「書面を取り交わすなど」とも述べています。
 処理業者が対象となる水銀廃棄物を取り扱えることを確認した覚書などを取り交わすか、最低限、社内文書としてその旨の記録をしておくべきでしょう。
 また、ここで排出事業者が最も悩む点は、「どのような点を確認すれば、処理業者が水銀廃棄物を取り扱えると判断できるのか」ということでしょう。
 蛍光灯などの水銀使用製品産業廃棄物に絞って、本法施行令等の処理基準から考えれば、それは、主に次のような点となるでしょう。
 ①収集運搬で、破砕防止や混合防止の措置を講じている
 ②処理施設で、水銀の飛散防止の措置を講じている
 ③水銀回収が義務付けられている水銀使用製品産業廃棄物の場合、所定の回収方法で回収している
 ④安定型最終処分場に埋め立てていない
 これらを処理業者へ確認し、問題がなければ、法に基づき水銀使用製品産業廃棄物の処理が行えることを確認した旨の書面を取り交わすとよいでしょう。

【Q】水銀使用製品産業廃棄物には卒業基準はないのか?(Q2-4)
 回答では、卒業基準はないと述べ、水銀使用製品産業廃棄物を破砕したものなどは、水銀使用製品産業廃棄物のまま適切に処理することを求めています。

【Q】水銀電池を取り外した補聴器はどうなるか?(Q5-4)
 回答では、水銀電池が取り外された後の補聴器本体は水銀使用製品に該当しないため、水銀使用製品産業廃棄物にも該当しないと述べています。

【Q】水銀回収が義務付けられていない水銀使用製品産業廃棄物について、大気中への飛散防止措置が必要とのことだが、設備の密閉度や、集じんの捕集効率などは具体的に示されるのか?(Q5-7)
 水銀使用製品産業廃棄物の処分を行う場合は、大気中に飛散しないように必要な措置を講じることが義務付けられています(本法施行令6条1項2号ホ(1))。
 回答では、法令上は「飛散させない」という規定のみであり、数値基準は規定していないと述べています。
 ちなみに、「水銀廃棄物ガイドライン」では、水銀使用製品産業廃棄物の破砕を行う際には、密閉された設備で行う、設備や施設からの排気は集じん機や活性炭フィルターで処理するなど、製品中に含まれる水銀が大気中に飛散しないようにすることを定めています。

なお、環境省からはこのQ&Aに加えて、リーフレット「水銀廃棄物の適正処理について、新たな対応が必要になります。」が公表されています。おそらくこのリーフレットがもっとも簡易なものとなるので、社内へ展開するのも一考でしょう。  

(2017年10月)

▶︎ ◎水銀廃棄物関係(環境省) ※リーフレットや「廃棄物処理法施行令等の改正に関するQ&A」が収録されています
http://www.env.go.jp/recycle/waste/mercury-disposal/index.html

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