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改正化審法、30年4月に第一段階施行へ~法の全体像を再チェック

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環境コンサルタント
安達宏之 氏

 平成30年4月1日、29年6月に成立した改正化審法の一部が施行されます。

 企業の環境担当者にとって、化審法は実務上関わるケースがあまりないためか、苦手意識を強く持つ方々が多くいるように感じます。
 今回は、改正法のポイントとともに、本法の全体像についても解説していきましょう。

 化審法の正式名称は、「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」。その名の通り、「審査」と「規制」の二本立ての法律です。

 まず、本法では、新たに製造・輸入される化学物質について、事前審査制度を設けています。有害な化学物質が市場に出回らないように、原則として年1トン以上の新規化学物質を製造・輸入するときは、事前審査を受けなければなりません。

 一方、製造・輸入が認められた後も、化学物質は次のように分類され、化学物質の性状等に応じてそれぞれ規制措置が講じられています。

○第一種特定化学物質:
環境中への放出を回避。製造・輸入が許可制であり、原則禁止である。
○監視化学物質:
使用状況等を詳細に把握。製造・輸入実数数量や詳細用途等の届出義務がある。
○第二種特定化学物質:
環境中への放出を抑制。製造・輸入量、用途等の届義務がある。必要に応じて予定数量の変更命令の規定がある。また取扱いの技術指針も設定。
○優先評価化学物質:
有害性や使用状況等を詳細に把握。国がリスク評価。年間1トン以上製造・輸入した事業者に対し、製造・輸入量、詳細用途別出荷量等の届出義務がある。有害性調査指示の規定もある。
○一般化学物質:
使用状況等を大まかに把握。国がリスク評価。年間1トン以上製造・輸入した事業者に対し、製造・輸入実績数量、用途等の届出義務がある。

 こうした化審法が、平成29年6月に改正されました。改正のポイントは2点あります。

 1つは、「毒性が強い一般化学物質への規制」です。これは、規制強化であり、平成30年4月1日に施行されます。
 これまで、人や動植物への毒性が確認されているものの、環境排出量が少ないために、規制の少ない一般化学物質に位置づけられているものがありました。これを規制強化することにしたのです。

 一般化学物質のうち「特定一般化学物質(特定新規化学物質)」を新たに定義し、一般化学物質の中でも毒性が強い化学物質である旨、国から事業者に通知されます。

 事業者には、当該化学物質を販売する際は毒性が強いものである旨の情報伝達の努力義務規定が設けられました。
 また、主務大臣から事業者に対し、環境汚染を防止するためにサプライチェーンに沿って、管理手法の改善策などの情報を提供するなどの指導・助言も行われます。
 さらに、主務大臣は、取扱い状況の報告について報告を求めることもできます。

 もう1つは、「特例制度の合理化」です。これは、規制緩和であり、平成31年1月に施行されます。
 前述したように、化審法には、新たに製造・輸入される化学物質に対する事前審査制度を設けていますが、事業者負担を軽減するために、いくつかの特例制度があります。

 特例制度の一部では、「個社数量上限」とともに、「全国数量上限」のルールがあります。
 複数社がこの制度を利用しようとすると国は、全国数量上限も超えないように各社に割り当てる数量を調整することになります。
 そうなると、時間がかかるとともに、自社に割り当てる数量が最終的にどのくらいになるかわからなかったために、ビジネス上の不安定要因とされてきました。

 そこで、改正法では、あらかじめ用途ごとの排出係数を定め、製造・輸入数量に用途別の排出係数を乗じた数量(環境排出量)に基づく全国数量上限のルールに変更しました。これにより、全国数量上限に達するものが減り、数量調整を減少させることができます。

 このように、今回の改正化審法では、規制強化と規制緩和の二本立てとなっています。
 近年の環境法の改正ではこのようなパターンの改正が多いので、「規制強化か、規制緩和か」を意識して改正法を読んでみるといいでしょう。

(2018年02月)

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