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プラスチック資源循環法案、事業者規制が一気に強化へ~排出事業者にも基準順守を義務付け!

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環境コンサルタント
安達宏之 氏

2021年3月9日、「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案」が閣議決定され、国会へ提出されました。成立すれば、公布日から1年以内に施行されます。

本欄でもこれまで何度か触れてきましたが、プラスチック問題は現在、主要な環境問題の一つと言っても過言ではありません。

海洋プラスチックごみ問題が世界的に注目され、最近ではプラスチックの製造が、気候変動の重要な要因の一つという捉え方も広まってきました。
さらに、廃棄物の輸入規制強化による廃プラスチックの国内処理と削減の必要性が指摘され、国内におけるプラスチックの資源循環は大きな課題となっています。

2019年5月、政府は「プラスチック資源循環戦略」を策定し、それに基づき、2020年7月にはレジ袋有料化義務化が始まっていますが、それにとどまらず、ついに、様々な規制措置を含む本法案が国会に上程されるに至りました。

法案は、プラスチック製品や廃棄物に関わるメーカーや小売業者、排出事業者など、広範囲の事業者に規制措置を定めています。

例えば、廃プラスチックを排出する事業者に対しても基準順守を義務付け、逸脱した場合の勧告や命令、罰則の規定を定めるなど、従来よりも大きく踏み込んだ内容のものです。十分に注意して対応すべきでしょう。

■法案の概要 法案の概要は、次の図表の通りです。

プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案

1 基本方針 ○プラスチックの資源循環促進のために、国が基本方針を策定する
2 環境配慮設計指針 ○メーカー向けの環境配慮設計の指針を策定する
指針に適合した設計を認定する仕組みを設ける
3 ワンウェイプラスチック ワンウェイプラスチックを提供する小売・サービス事業者などが取り組むべき判断基準を策定する
多く提供する事業者に勧告・公表・命令を措置する
4 市区町村の再商品化の促進 ○容器包装リサイクル法ルートを活用した再商品化
○主務大臣の認定の下、市区町村と再商品化事業者が連携した再商品化計画の作成・実施
5 製造業者等による自主回収の促進 ○主務大臣が認定した場合、製造・販売事業者等がプラスチック製品等を自主回収・再資源化する際の廃棄物処理法の業許可を不要とする
6 排出事業者の排出抑制・再資源化の促進 排出事業者が取り組むべき判断基準を策定する
多く排出する事業者への 勧告・公表・命令を措置する
○主務大臣が認定した場合、排出事業者等が再資源化する際の廃棄物処理法の業許可を不要とする
施行日:公布の日から1年を超えない範囲内で政令で定める日

■法案の全体構成は?
条文の数(本則)は、総計66条に及ぶものであり、筆者の想像を超えるそれなりに大型の法律となりました。
ただ、法案の構成はシンプルです。

国がプラスチックの資源循環に関する基本方針を策定し、その方針の下に、上記2~6の措置を実施していくというものです。

上記2~6はいずれも気になる措置ですが、特に2、3、6は、多くの事業者に関わることなので、今回はこの3つの点について以下に解説していきます。

■メーカーに環境配慮設計を求める
主務大臣は、プラスチック使用製品製造事業者等が努めるべき環境配慮設計に関する指針を策定します(指針は法案成立後に制定される)。

具体的には、プラスチックの使用量の削減やプラスチックに代替する素材の活用などの事項が指針に盛り込まれます。

また、環境配慮指針に適合した設計であることを認定する仕組みを設けます。認定製品は、グリーン購入法に基づき、国が率先して調達する予定です。

■ワンウェイプラスチックの使用削減を求める
主務大臣は、「特定プラスチック使用製品提供事業者」が「特定プラスチック使用製品」の使用を合理化するための判断基準を定めます(判断基準は法案成立後に制定される)。

「特定プラスチック使用製品」とは、本法28条では、次のように定められています(適宜略した)。

「商品の販売又は役務の提供に付随して消費者に無償で提供されるプラスチック使用製品(容器包装リサイクル法の容器包装を除く。)として政令で定めるものをいう。」

なかなか難解な定義ですが、要するに、容器包装材とは別に消費者に渡すことになる使い捨てプラスチック(ワンウェイプラスチック)を指すと言えるでしょう。

こうしたワンウェイプラスチックの提供事業者、すなわち、小売業者やサービス事業者に対して、いわば、「省エネ」ならぬ、「省ワンウェイプラスチック」に関する基準を設定するというのです。

さらに、事業において提供する特定プラスチック使用製品の量が「政令で定める要件」に該当する事業者に対して、主務大臣の勧告・公表・命令の措置も定められました。
この命令に違反した場合は、50万円以下の罰金に処するという罰則もあります。

■排出事業者に排出抑制や再資源化を求める
主務大臣は、「排出事業者」が排出抑制や再資源化等の取り組むべき判断基準を策定します。
ここでいう「排出事業者」には、中小企業基本法の「小規模企業者」やその他の「政令で定める者」は除かれます(判断基準や政令は法案成立後に制定される)。

排出事業者は、この判断基準に沿って排出抑制や再資源化に取り組むことになります。
その取組みに問題があれば、主務大臣の指導や助言を受けることになります。

さらに、プラスチック使用製品産業廃棄物等の排出量が政令で定める要件に該当する排出事業者は「多量排出事業者」として、判断基準に照らして著しく不十分な取組みをしている場合は、主務大臣による勧告・公表・命令の対象となります。
この命令に違反した場合は、50万円以下の罰金に処するという罰則もあります。

なお、以上の規定とは別に、主務大臣が認定した場合、排出事業者等は、廃棄物処理法の業許可を持たずに再資源化計画に基づく再資源化ができるようになる規定も設けられました。

以上が法案のポイントです。
このように、法案の規制対象は広範囲にわたり、多くの事業者に関係してくることになります。
このまま成立すれば、重要な環境法がまた一つ誕生したと言われることでしょう。法案成立後も目を離さずにフォローすべきです。

◎プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案の閣議決定について
⇒ http://www.env.go.jp/press/109195.html

(2021年4月)

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