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プラスチック資源循環法、事業者規制の詳細が明らかに! ~令和4年4月施行に向けて準備すべきことは?

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環境コンサルタント
安達宏之 氏

2022年1月19日、前年に成立したプラスチック資源循環法(正式名称「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」)の規定の詳細を定める政令や省令などが一気に公布されました。

また、本法の施行日を4月1日と定めました。いよいよ「プラスチック」の名称が入った初めての法律が動き出そうとしています。
過去の記事
「【第80回】プラスチック資源循環法案、事業者規制が一気に強化へ ~排出事業者にも基準順守を義務付け!」」
では、事業者にとっての本法の基本的なポイントとして、

① メーカーに対して、「環境配慮設計指針」に沿った設計を求める
② 小売業者等に対して、「判断基準」に沿って、ワンウェイプラスチックの使用削減を求める
③ 排出事業者に対して、「判断基準」に沿って、排出抑制や再資源化を求める

―の3つがあることを解説しました。

今号では、まず、①~③それぞれの規制対象が具体的に誰であるのかを解説します。
新法や改正法ができたとき、企業として第一に確認すべきことは、それが自社に適用されるかどうかです。

下記の(1)を確認し、自社が該当しそうな場合は、表中の「関連法令」を確認してください。法令原文は、本記事の末尾に掲げた環境省ウェブサイトで読むことができます。

そのうえで、特に多くの事業者が対象となる③の規制の詳細について、(2)で解説します。

(1)本法の規制対象は誰か?
上記①~③それぞれの規制対象は、次の表の通りとなります。

プラスチック資源循環法の主な規制対象

主な規制事項規制対象関連法令
①「環境配慮設計指針」に基づく設計 「プラスチック使用製品製造事業者等」 (プラスチック使用製品の製造を業として行う者(その設計を行う者に限る。)及び専らプラスチック使用製品の設計を業として行う者) 「プラスチック使用製品設計指針」
②「判断基準」に沿ったワンウェイプラスチックの使用削減 「特定プラスチック使用製品提供事業者」 (その事業において特定プラスチック使用製品(商品の販売又は役務の提供に付随して消費者に無償で提供されるプラスチック使用製品として政令で定めるものをいう。)を提供する事業者であって、特定プラスチック使用製品の使用の合理化を行うことが特に必要な業種として政令で定めるものに属する事業を行うもの) ※政令で定める製品・業種
製品業種
1 フォーク、スプーン、テーブルナイフ、マドラー及び飲料用ストロー 各種商品小売業(無店舗のものを含む。)、飲食料品小売業(野菜・果実小売業、食肉小売業、鮮魚小売業及び酒小売業を除き、無店舗のものを含む。)、宿泊業、飲食店及び持ち帰り・配達飲食サービス業
2 ヘアブラシ、くし、かみそり、シャワーキャップ及び歯ブラシ 宿泊業
3 衣類用ハンガー及び衣類用カバー 各種商品小売業(無店舗のものを含む。)及び洗濯業
「特定プラスチック使用製品提供事業者の特定プラスチック使用製品の使用の合理化によるプラスチック使用製品廃棄物の排出の抑制に関する判断の基準となるべき事項等を定める省令」
③「判断基準」に沿った排出抑制や再資源化 「排出事業者」
(プラスチック使用製品廃棄物のうち産業廃棄物に該当するもの又はプラスチック副産物(プラスチック使用製品産業廃棄物等)を排出する事業者)

※小規模企業者その他の「政令で定める者」を除く。
※「政令で定める者」 (=対象とならない事業者)
業種規模
1 商業及びサービス業以外の業種に属する事業を主たる事業として行うもの 常時使用する従業員の数が20人以下の個人及び法人その他の団体
2 商業又はサービス業に属する事業を主たる事業として行うもの 常時使用する従業員の数が5人以下の個人及び法人その他の団体
「排出事業者のプラスチック使用製品産業廃棄物等の排出の抑制及び再資源化等の促進に関する判断の基準となるべき事項等を定める命令」

(2)排出事業者の規制事項 ~「判断基準」のポイント
次に、上記(1)③に掲げた排出事業者への規制の詳細について解説します。

この詳細は、「排出事業者のプラスチック使用製品産業廃棄物等の排出の抑制及び再資源化等の促進に関する判断の基準となるべき事項等を定める命令」(2022年年1月19日内閣府・デジタル庁・復興庁・総務省・法務省・外務省・財務省・文部科学省・厚生労働省・農林水産省・経済産業省・国土交通省・環境省・防衛省令第1号)に定められています。

具体的には、次の9項目提示されています。

①プラスチック使用製品産業廃棄物等の排出の抑制及び再資源化等の実施の原則
②プラスチック使用製品産業廃棄物等の排出の抑制
③プラスチック使用製品産業廃棄物等の再資源化等
④多量排出事業者の目標の設定及び情報の公表等
⑤排出事業者の情報の提供
⑥加盟者におけるプラスチック使用製品産業廃棄物等の排出の抑制及び再資源化等の促進
⑦教育訓練
⑧排出の抑制及び再資源化等の実施状況の把握及び管理体制の整備
⑨関係者との連携

これら「判断基準」を読むと、プラスチック使用製品産業廃棄物等の排出量の削減率や再資源化率などの具体的な数値目標は定められていません。
「曖昧な内容だな」という印象を持つ方も多いことでしょう。

しかし、個々の条文を読み込んでいくと、取組むべき事項はある程度明確であると思われます。

例えば、上記②について主に講ずべき措置として次の3つを掲げています。

1 プラスチック使用製品の製造、加工又は修理の過程 ① プラスチック使用製品に係る原材料の使用の合理化を行うこと
② プラスチック使用製品産業廃棄物等の端材の発生を抑制すること
③ プラスチック使用製品産業廃棄物等の端材やプラスチック使用製品の試作品を原材料として使用すること
2 流通又は販売の過程において使用するプラスチック製の包装材 ① 簡素な包装を推進すること
② プラスチックに代替する素材を活用すること
3 事業活動において使用するプラスチック使用製品 ① なるべく長期間使用すること
② 過剰な使用を抑制すること
③ 部品又は原材料の種類について工夫されたプラスチック使用製品を使用すること

筆者がこれまで訪問した工場・事業場で見てきたプラスチック使用製品産業廃棄物等の取扱いを思い返してみると、筆者の肌感覚としては、これらの措置のいくつかを検討していない企業が少なくないように思います。

したがって、対象事業者は、「判断基準」が定める個々の事項ごとに、排出の抑制及び再資源化等の自社の取組みが適切かどうか確認し、不十分な箇所については追加の取組みを検討し、可能な範囲で実施すべきではないでしょうか。

また、「判断基準」では、「多量排出事業者」に対して独自の規制を定めています。
「多量排出事業者」とは、本法施行令により、前年度におけるプラスチック使用製品産業廃棄物等の排出量が250トン以上とされています。

独自の規制とは、事業活動に伴い生ずるプラスチック使用製品産業廃棄物等の排出の抑制及び再資源化等に関する目標を定め、これを達成するための取組を計画的に行うことを求めていることです。

さらに、毎年度、前年度におけるプラスチック使用製品産業廃棄物等の排出量及び前項の規定により定める目標の達成状況に関する情報をインターネットの利用その他の方法により公表するよう努めることも求めています。

このように、本法では、多くの事業者が該当することになる「排出事業者」に対して様々な規制を定めています。
施行までに積極的な対策の検討と実施が求められます。

◎プラスチック資源循環(環境省)
⇒ https://plastic-circulation.env.go.jp/

(2022年2月)

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