環境活動の内部監査をサポートするため、梱包資材を製造する企業を訪問したときのことです。
その会社では、自ら作成したチェックリストに沿って内部監査を実施していました。
関係者の皆さんは一所懸命取り組んでいたものの、環境法の順守の確認作業については少々不安を覚えました。
例えば、工場にはコンプレッサー(空気圧縮機)が多数ありました。騒音規制法や条例により騒音規制の適用を受ける設備です。
この点について、チェックリストには、「届出を確認」と「測定記録を確認」と書かれてあります。
監査員のチェックの仕方を見ていると、過去の届出書類と測定記録があるかどうかだけを確認して、監査を終えていました。
本来であれば、届出については、現在の対象設備がいくつあり、変更届出の必要がないかどうかを確認しなければなりません。また、測定については、超えてはならない規制基準がどれほどなのかを把握したうえで測定記録を確認しなければなりません。
しかし、いずれの対応もされず、後で確認したところ、変更届出を出さなければならない状況であることが明らかになったのです。
次の図表のように、環境法を順守する際には、規制を管理するポイントが何であるかを押さえた上で、チェックの手順を整備すべきでしょう。
環境法の規制内容と順守の仕方(例:騒音規制)
法令 | 規制概要 | 管理のポイント | 順守手順(例) |
---|---|---|---|
騒音規制法 | 特定施設7.5kW以上の空気圧縮機など11設備)の設置や変更をしようとするときは届出 | 現状の設置数の確認と2倍を超える場合の届出が必要 |
・対象設備リストを作成 ・変更届出の必要がないか確認 |
事業所の敷地境界線において規制基準を順守 | 定期的な測定が必要 |
・測定実施し、基準内を確認 ・今後基準逸脱に陥るおそれがないか確認 |
|
〇〇県生活保全条例 | 法律の対象外の施設等を定め、その設置や変更をしようとするときは届出 | 規制の枠組みは法と似ているので、法と一緒に管理すべき | ・上記の法規制をチェックする際に、法の特定施設だけでなく、条例の対象施設も同時にチェック |
事業所の敷地境界線において規制基準を順守 |
騒音規制法の場合、7.5キロワット以上のコンプレッサーは規制対象となり、工場として最初の設置時に届出が義務付けられ、その後、設置数が2倍を超えたときに変更届出を提出することが義務付けられています。
また、敷地境界線において規制基準を超える騒音を出さないことが求められます。
条例の規制は地域によって異なるものの、基本的には、騒音規制法と同じような規制の仕組みを設定し、規制対象を法よりも裾下げしていることが一般的です。
ちなみに、この会社の立地する地域の自治体では、3.75キロワット以上7.5キロワット未満のコンプレッサーなどを規制する条例がありました。
こうしたコンプレッサーへの騒音規制に対応する手順を考えてみましょう。
まず、届出義務については、設置届出書がすでに出ていることを確認します(残念ながら、たまに未届出で行政指導を受ける企業を散見します)。
設置届出が出ていれば、変更届出の有無だけを確認すればよいでしょう。上記の通り、本法は設置が2倍を超えなければ変更届出は不要ですので、逆に言えば、現状の設置数の確認を行い、2倍を超える場合は届出が必要となります。
そこで、対応の手順としては、例えば対象設備リストを作成し、新規の対象設備を設置する前に本リストにてチェックを行い、変更届出の必要がないか確認できる手順を整備することにより、着実な管理が行えます。
次に規制基準順守についてみると、本法には事業者に測定義務はないものの、規制基準を超えれば違法になるので、超えていないことを明確にするために、一般に定期的な測定は必要となります。
多くの企業では、例えば、年2回、敷地境界線において独自の測定を実施し、規制基準内にあることを確認するような手順を整備していると思います。
実施状況をチェックする際には、単に測定の有無を確認するだけでなく、測定結果が規制基準内に収まっている値かどうかを確認することはもちろんのこと、過去の測定結果の推移や工場の稼働状況から、今後規制基準を超えるおそれがないかどうかも確認すべきでしょう。
さらに条例の順守については、条例の規制の枠組みは法と似ているので、法と一緒に管理することが効率的でしょう。上記の法規制をチェックする際に、法の特定施設だけでなく、条例の対象施設も同時にチェックする手順を整備すべきです。
このように、法規制に着実に対応するためには、単に法令の条文をそのまま受け取るだけでなく、それぞれの法令の規制が自社のどのような場面(設備等)に具体的に適用されるのかを把握し、具体的にリストアップすることが求められるのです。
(2020年07月)