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建設廃棄物②

Author

行政書士 尾上 雅典氏
(エース環境法務事務所 代表)

 前号では、建設廃棄物に関する注意点として、
・工事と名乗れば、なんでも建設工事になるわけではない
・廃棄物処理法第21条の3の対象は、「土木建築に関する工事であって、建築物その他の工作物の全部又は一部の新築、改築、又は除去、あるいは解体工事」に限定されることに注意
 と解説しました。

 今回は、建設廃棄物の排出事業者として、廃棄物処理法で明確に位置づけられた「元請事業者」について深掘りします。

 廃棄物処理法第21条の3第1項では、

当該建設工事の注文者から直接建設工事を請け負つた建設業を営む者(「元請業者」)を事業者とする

と、法律の条文上で、排出事業者の定義が明文化されています。これは、他の業態には見られない、建設廃棄物特有の規定となります。

 このような位置づけがなされた理由として、環境省は通知で次のように説明しています。

平成23年2月4日付環廃対発110204004号環廃産発第110204001号
第十七 建設工事に伴い生ずる廃棄物の処理責任を明確化するための措置
1 建設工事に伴い生ずる廃棄物の処理の責任
 土木建築に関する工事(建築物その他の工作物の全部又は一部を解体する工事を含む。以下「建設工事」という。)が数次の請負によって行われる場合には、当該建設工事に伴い生ずる廃棄物について実際に排出した事業者を特定することは困難な場合もあり、その処理責任の所在が曖昧になりやすいという構造にある。
 このため、都道府県知事が行政処分を行う相手方が不明確となり、このような廃棄物の適正処理を確保するための措置を適切に執行することができないという問題が生じており、これが、今なお多く発生している建設工事に伴い生ずる廃棄物の不法投棄や不適正処理の一つの要因となっている。
 そこで、廃棄物処理に係る適正かつ効率的な行政運営により建設工事に伴い生ずる廃棄物の適正処理を確保し、ひいては生活環境の保全に資するため、建設工事に伴い生ずる廃棄物については、元請業者が、事業者として当該工事から生ずる廃棄物全体について処理責任を負うこととし、当該廃棄物の処理についての法の規定のうち、排出事業者に係る規定の適用については、元請業者を事業者とすることとした(法第21条の3第1項)。

 建設工事は、元請の他に、それぞれの工事内容に専門特化した下請業者が多数参画し、元請と下請が一体となって進めていく構造にあります。そのため、工事の副産物となる建設廃棄物の管理責任者が元請なのか下請なのかが、外部からは判別しがたい状況が多々あります。
 そのため、建設廃棄物の不適正保管を行政が見つけた場合でも、行為者が「私は下請ですが、工事にも実際に関わっていたので排出事業者です」と言われてしまうと、不適正保管の是正措置を法的に求めることが困難になり、行政が手をこまねいているうちに、不適正保管が不法投棄に発展してしまう、というケースが多数ありました。
 こうした状況を一挙に改善するために、2010年改正で、「元請が(唯一の)排出事業者」と明文化され、元請に処理責任が一本化されました。
 先述したとおり、建設廃棄物以外の産業廃棄物の場合は、廃棄物処理法上、排出事業者が誰かを明文化されていません。それだけ、「建設工事の元請事業者の責任は重い」とも言えます。
 別の言い方をすると、建設廃棄物に関しては、「元請事業者以外が排出事業者になることは有り得ない 」こともご理解いただけると思います。

 しかしながら、実際には、元請事業者以外が排出事業者になり替わっている事例も多々あります。こうした事例の違法性については、次号で解説します。

(2019年11月)

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