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建設廃棄物④

Author

行政書士 尾上 雅典氏
(エース環境法務事務所 代表)

 前号では、「発注者の求めに応じて、元請業者が建設廃棄物を工事現場に放置して去る行為は不法投棄に該当する」ことを解説しました。今回は、「発注者側の違法性」について解説します。

 まず、発注者は、元請業者に排出事業者としての責任を放棄させ、不法投棄をさせていますので、「不法投棄を教唆(きょうさ)」していることになります。
 発注者にしてみれば、「いや、不法投棄なんてさせていない。鉄くずを工事現場に置いて行ってもらっただけだ!」という軽い気持ちなのかもしれませんが、元請業者は、建設廃棄物を工事現場に放置した瞬間に、「みだりに廃棄物を捨てた」ことになります。
 「排出事業者による処理責任」という法律で定められた基本原則を、建設廃棄物の処理に関しては部外者となる発注者が自由に捻じ曲げて良いという法はどこにもないことにご留意ください。

 さて、ここまでが前置きで、いよいよ本題の廃棄物処理法違反の有無について考察していきます。
 違法性について具体的に考えるため、前号でお示しした事例を再びケースとして取り上げます。

①一つの拠点に複数のグループ企業が混在
②建設工事は、グループ企業内の建設工事を担うことを目的として設立された子会社が施工
③(発注者でしかない)親会社やホールディングカンパニーが、建設工事で発生した鉄くずを自社の財産として抜き取り、売却

 このケースは、親会社が所有する工作物の解体工事を子会社が施工しますが、解体工事で発生した鉄くずを施工現場に置いて帰らせた後、親会社が恣意的に鉄くずを売却という流れになります。
 「不法投棄教唆」以外で廃棄物処理法に抵触する部分は、「発注者でしかない親会社が、他者が発生させた建設廃棄物の処理、あるいは処理委託(売却の場合もあり)」をしているところです。
 ここで、「廃棄物処理法の罰則には、『発注者が処理委託をしてはいけない』とは一言も書かれていないので、違法ではない」と主張する方がたまにいらっしゃいます。たしかに、廃棄物処理法の罰則には、発注者に直接的に言及した条文はありません。しかし、「それみたことか。だから、発注者は他者(子会社となる元請業者)が発生させた産業廃棄物の処理に関わっても良いのだ!」と即断することは早計です。
 たとえば、廃棄物処理法第16条では、「何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない。」という条文がありますが、「『発注者はみだりに廃棄物を捨ててはならない』と書いていないので、発注者は不法投棄を自由にできるのだ」と解釈できるのかというお話です。もちろん、皆様がご存知のとおり、「何人も」の中に、「発注者」も当然含まれますので、発注者は不法投棄をしてはいけません。

 現実問題として、発注者のところに建設廃棄物がいきなり天から降ってくるわけがありませんので、「その鉄くずは売れそうだから置いて帰ってくれ。」と、発注者が元請業者に頼む過程が必ず発生します。そうして放置された産業廃棄物を発注者の占有物として譲り受けた瞬間、発注者(親会社)は、排出事業者(子会社となる元請業者)から産業廃棄物の産業廃棄物処理を引き受けたことになります。
 この状態は、廃棄物処理法第25条第十三号の罰則に抵触します。

第25条 次の各号のいずれかに該当する者は、5年以下の懲役若しくは1千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
十三 第14条第15項又は第14条の4第15項の規定に違反して、産業廃棄物の処理を受託した者

上記の「法第14条第15項」の規定とは、

廃棄物処理法第14条
15 産業廃棄物収集運搬業者その他環境省令で定める者以外の者は、産業廃棄物の収集又は運搬を、産業廃棄物処分業者その他環境省令で定める者以外の者は、産業廃棄物の処分を、それぞれ受託してはならない。

 というもので、無許可業者がブローカー的立場で産業廃棄物処理に関与することが明確に禁止されています。

 このように、廃棄物処理法では、産業廃棄物処理業者ではない「発注者」が、他者の発生させた産業廃棄物処理に関わることを明確に禁止していますので、法律を恣意的に曲解、あるいは誤解をしないようにお願いします。

(2020年01月)

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