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建設廃棄物⑤

Author

行政書士 尾上 雅典氏
(エース環境法務事務所 代表)

 今回は、廃棄物処理法の条文解説に戻り、「第21条の3第2項」の解説をします。

法第21条の3第2項(下請事業者の保管基準遵守義務)

 建設工事に伴い生ずる産業廃棄物について当該建設工事を他の者から請け負つた建設業を営む者から当該建設工事の全部又は一部を請け負つた建設業を営む者(以下「下請負人」という。)が行う保管に関しては、当該下請負人もまた事業者とみなして、第十二条第二項(保管基準)、第十二条の二第二項(特別管理産業廃棄物の保管基準)及び第十九条の三(改善命令)(同条の規定に係る罰則を含む。)の規定を適用する。

 法第21条の3第1項では、「元請事業者が建設廃棄物の排出事業者となるのが原則」と定められていました。では、元請ではない下請事業者の場合、廃棄物処理法違反をしても罪に問われることがないのでしょうか?

 下請事業者は、建設現場で実際に工事に関わる事業者ですので、「廃棄物処理法の規制を一切受けない」となると、下請に建設廃棄物の不適切な処分をさせれば、誰も罪に問われないことになります。例えば、下請事業者が自分の廃棄物ではないと主張し、建設廃棄物を不適切に放置した結果、建設現場外へ廃棄物が飛散流出し続けるというような状況を考えてみてください。元請事業者に建設廃棄物保管基準の遵守義務があるのは当然ですが、法第21条の3第2項が、現場で実際に作業を行っている下請事業者にも保管基準の遵守義務を課し、現場で作業をする関係者全員に廃棄物の適正保管をさせることが可能となっています。

 このような理由で、法第21条の3第2項は、"建設現場で行う廃棄物の保管"に関しては、下請事業者も排出事業者とみなして、保管基準の遵守義務を課し、保管基準を遵守しない下請事業者は改善命令の対象とすると定められました。

 なお、建設現場の外で行う廃棄物の保管の場合、下請事業者の責任はどうなるかという問題についてですが、下請事業者は工事現場内での廃棄物保管については排出事業者とみなされるものの、ひとたび廃棄物が建設現場から搬出されてしまうと、その搬出の時点から、下請事業者は排出事業者ではなくなります。そのため、建設現場の外においては、下請事業者は、元請という他人の廃棄物を下請事業者の自社廃棄物として保管することはできません。
 このように、法第21条の3第2項は、建設現場内での廃棄物保管に限定して、下請事業者にも保管基準の遵守義務を課しているのです。

※なお、厳密には、建設現場以外での廃棄物保管としては、「廃棄物処理法第21条の3第3項」に基づく保管もあり得ますが、同項はあくまでも例外規定であり、基本的には産業廃棄物処理業者ではない者が他人の産業廃棄物の保管や処理を引き受けることはできません。同項の例外規定の詳細は、次号で解説します。

(2020年02月)

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